深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
石橋湛山『石橋湛山評論集』
石橋湛山評論集 (岩波文庫 青 168-1)石橋湛山評論集 (岩波文庫 青 168-1)
(1984/01)
石橋 湛山

商品詳細を見る

 しかしながらここに問題となって来ることは、しからば我が現代の人心は何故にかくの如く浅薄弱小、確信なく、力なきに至ったかということである。吾輩はこれに対して直ちにこう答える。曰く、哲学がないからである。言い換えれば自己の立場についての徹底せる智見が彼らに欠けておるが故であると。例えばこれを吾輩が前に挙げた外交家の例に取って見よ。彼らは日本の立場がわからないのである。日本の現在および将来の運命を決する第一義はどこにあるか。徹底した目安がついておらないのである。徹底した目安がない。ここにおいてか彼らはやむをえず、その時々の日和を見、その時々の他人の眼色を窺って、行動するよりほかに道はないのである。また例えば前に挙げた訴訟の問題の如き、もしその人に、またその人の周囲に居た弁護人や知人に、自己存在の第一義について徹底した智見があって、真に自己が生きるためには、第一に何を主張しなければならぬかということがわかっておったならば、決してあのような処置は取らなかったはずである。けだし徹底せる智見は力である。徹底せる智見なきが故に、主張すべき自己がわからず、主張すべき自己がわからぬ故に、即ちその我は弱小浅薄非力無確信となるのである。

石橋湛山「哲学的日本を建設すべし」より


 今後、日本の人口が否応なく減少していくためか、湛山の「小日本主義」という言葉を耳にすることも増えてきたように思う。彼の時代に問題になったのは人口過剰と方向が逆だけれど、おもしろい視点が得られるかもしれないと思って読んでみた。

 本書は東洋経済新報社の記者として、また戦後は政治家として多くの評論を残した石橋湛山の政治評論を中心に集めたもの。戦前から戦後にかけての活動時期が5つにわけられ、個々の評論は年代順に並べられている。

 文章は堅い感じがするけれども、雑誌に書かれていたこともあってとても読みやすく、語り口は明快だと思う。
 湛山は一貫して日本の帝国主義的な政策を批判していた。その理由の一つは、他民族の支配は遅かれ早かれ反発を招き、植民地経営を維持していくことはできないという現実的なもの。

 また植民地経営の利益は微々たるものであり、撤退して友好関係を築き自由貿易を行ったほうが得られる利益が大きいとする。

 こういった理由から帝国主義は小慾にとらわれ大慾を見失ったものだとする。こういった論旨はデータを用いて語られ説得的に思われる。

 引用したところのように、日本人の行動規範の欠如を指摘してきしたり、言論の自由の重要さを説くところなどは、山本七平にも似ていておもしろかった。

「精神の復興とは ほか」という記事で、親のすねかじり者には選挙権を与えるなという議論に、政治家は先祖のすねかじりではないかと切り返すところはとても痛快だった。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://deepseafishtank.blog123.fc2.com/tb.php/96-691acacd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。