深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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山本七平『現人神の創作者たち』
現人神の創作者たち〈上〉 (ちくま文庫)現人神の創作者たち〈上〉 (ちくま文庫)
(2007/10)
山本 七平

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 ここで直方が言っていることはきわめて明瞭である。中国と日本、というよりむしろ中国思想と神道は基本的発想が全く違うから、その中から自分に都合のよい『拘幽操』をとりあげて、中国で聖人とされている湯武を否定し、それで「神儒妙契」などといっても無意味だということである。事実、禅譲であれ放伐であれ、ともに万世一系すなわち「皇統相続テ、姓ヲ易ヘ命ヲ革ルコトナキヲ尚ブ主張スル」思想とは全く別、禅譲は平和革命、放伐は武力革命であり、いずれにせよ中国の「国体の本義」は「革命」だということを無視して、「七ツ道具」で何やら証明したところで、それは「浅マシキコト」「ヲカシキ筈ノコト」にすぎない。

山本七平『現人神の創作者たち』


『禁忌の聖書学』でご子息の山本良樹さんが病床でイエス伝を書かずに済ませられないか、ともらしたエピソードを紹介していた。それは父にとってあまりにクリティカルだからと。

 私が読んだ著者の聖書関係の本では、イエスへの言及があっさりとしているように思われたのも、そういった事情があったのかもと印象に残った。

 それはさておき、良樹さんがイエス伝のほかに挙げている著者の書こうとしたものに、本書のテーマである「現人神」も含まれていたように思う。

 本書のあとがきでも著者は戦後二十年の沈黙の間、現人神の創作者を探していたと書いていて、「命がもたない」といわれるような作業を行っていたらしい。

 秀吉の朝鮮出兵の後、「秩序の思想」が待ち望まれる中、体制によって取り入れられた儒教、朱子学が「現人神」の種子を蒔いたことを著者は豊富な文献を読みながらたどっていく。

 読むのにはかなり骨が折れた。なじみの薄い江戸期の儒学者からの引用が多いのに、訳や要約はあまりなく、その理解を前提に議論が進んでいくので……。

 最後のほうは力尽き、理解もおぼつかないけれど、ところどころで著者が整理をしてくれるのをよすがに何とか目を通した。


 徳川幕府の統治の正統性を示すために、天皇から征夷大将軍に任じられたというその位置から尊皇思想が生まれてくるという。

 まず現れたのは中国を絶対化し、日本も中国になろうという「慕夏主義」であった。林道春(羅山)は「天皇は中国人である」とまでいった。

 しかし中国が異民族に征服されると、山鹿素行のように「日本こそ中国である」という「中朝論」が登場する。

 一方、幕府が導入した朱子学は、崎門学派により万世一系の天皇こそ正統性を持つとされ、それを絶対化してその回復に命をかける人間を生み出す芽がまかれた。

 そして水戸の彰考館の学者たちは孟子など背景に、朝廷が権力を失った時代にさかのぼり、その支配権の喪失を後白河、後醍醐の徳のなさに求めを徹底的に批判した。

 しかしこれは天皇制を否定するものではなく、過去を美化し歴史の過ちを糺す、その臣としての規範を守り通そうとする人間を生んだとする。


 印象に残ったのは、明君永楽帝に簒奪者であるからと徹底的に反抗した方孝孺という人物。絶対的な規範に裏打ちされた人間の行動の凄絶さに圧倒された。

 著者はこういった規範に殉じた人間を「日本人とは違う」というだけで、方孝孺になれともなるなとも言わない。そこがとても気になる。

 こういった絶対的規範に基づく人間の行動のすさまじさを知っていたから、自他の規範に無自覚な日本人に危機感を持っていたのだろう。


 それにしても小林秀雄の『考えるヒント2』のように、江戸期の文章がもっと読めたらもっと楽しめるのになと思う
コメント
この記事へのコメント
私も読みました
はじめまして。
読了後、『現人神の創作者たち』で検索していたところヒットしたので書き込ませてもらいました。
漢文を読むのは大変ですよね。意味が掴めない所は再読しませんでした。
朱子学の知識があると理解がはかどりますよね。次回読む時には江戸期の思想への理解が深まってからにしようと思ってます。
2008/04/17(木) 14:43:39 | URL | るうと #guRgTqeo[ 編集]
はじめまして
るうとさん、コメントありがとうございます。
なかなか時間的にも再読している余裕はとれないですよね。
私も少しずつでも古典に触れていきたいなと思っています。
2008/04/18(金) 07:48:41 | URL | raidou #dg9/JqvA[ 編集]
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