深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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ウィリアム・サローヤン『ディア・ベイビー』
ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)
(1986/07)
ウィリアム ギブスンウィリアム・ギブスン

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 昼間の暗がりが、夜の帳に変わったとき、私は帽子をかぶり、外へ出た。霧の中、町へ向かって歩く私のあとを、大きな辛抱強い犬のように、私の心がついてくる。町に着くと、友人である何人かの若者たちを見つけ、痛ましい限りのすすり泣きよりも、もっと悲痛な、死のような笑い声の中で、私たちは、食べ、飲み、話し、歌った。その間思い浮かぶのは、あの娘のすすりなきの愛らしさだけだった。

ウィリアム・サローヤン「はるかな夜」


 以前から気になっていた作家サローヤンの短編集。本書には長くても三十ページほどの短編が21編収められている。

 サローヤンはアルメニア系のアメリカ人作家。「訳者あとがき」によると、楽観的な作風が多いらしいけれど、この短編集にはやや暗いトーンのものが多いということだ。

 登場する人物は普通の人々だし、描かれる出来事も突飛なものでなく、文体も平易で、とても読みやすい。

 その反面、最初はおもしろいけれど淡々としているなと思った。そしてやや作り物ぽい印象が拭えなかった。
 しかし次第にセンチメンタリスティックな人物の描写がが好きになってきた。特に、「はるかな夜」「冬を越したハチドリ」「空中ブランコに乗った若者」の3編がいい。

「冬を越したハチドリ」は群れをはぐれ弱っていた一匹のハチドリを少年と老人の話。助けたハチドリは激しく飛びまわり真冬の空へ消えていく。

 その生活など全く感じさせずに、絶えず羽を動かし一直線に飛んでいくハチドリをサローヤンは「陽性の狂気」という。

 確かにそれはオプティミスティックなのかもしれないけれど、その状況は絶望的だ。

 処女作らしい「空中ブランコに乗った若者」も同様に、死と隣り合わせに見る夢のような物語ははかなさと美しさがあってすばらしい。
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