深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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Rayond Carver『Where I'm Calling from』
Where I'm Calling from: New and Selected Stories (Vintage Contemporaries)Where I'm Calling from: New and Selected Stories (Vintage Contemporaries)
(1989/06)
Raymond Carver

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She says, I forgive you.

Raymond Carver「Intimacy」



 ブログを始めた頃に、「収集」について少し書いたが、ようやく読了することができた。

 読み始めたのが10月からなので、500ページ強に4ヶ月半かかったことになる。途中さぼっていたとはいえ、やはり洋書はコストパフォーマンスがいい……。

 本書には、レイモンド・カーヴァーの代表的な作品が40篇弱収録されている。ほぼ年代順に収録されているので、カーヴァーの歩みをたどることができる。

 カーヴァーの文章は短いものが多いので、割と読みやすい英語なのではないかと思う。ただ口語表現や麻薬に関するスラングなども多いので難しく思う部分もあった。
 後期の温かみのある作品のほうが好きだったのだけれど、改めてカーヴァーの作品を読んでみると、初期の作品も楽しむことができた。

「アラスカに何があるの?」や「学生の妻」のように、人物たちが抱える絶望や狂気がむき出しになっていく過程はぞっとするようなすさまじさがある。どこにでもあるような普通の家庭もそれぞれに問題を抱えている。

 その一方で「収集」のようにユーモラスなものもある。破産を逃れようと自動車を金に換えようとする夫婦を描いた「これ本当の走行距離?」でも、妻の体のしわを道に見立てて車を走らすようになぞる夫の姿は悲劇の中にもおかしさがあって不思議な気持ちになった。

 そして、やはり後期の作品はすばらしい。そこでは中年といっていい人間に訪れる危機が描かれていて、人生の半ばを過ぎた人間にこんな苦しみが訪れるのかと苦しくなる。

 しかし、「象」や「メヌード」の人物たちは悩むのをやめて動き出していく。彼らの問題が好転する保証はないけれども、絶望的な状況の中にどこか清々しさがあってすばらしい。

 上に引用したのは「親愛」という作品から。別れた元妻を訪れなじられる男の短い話だけれど、問題をごまかしきれなくなった男の哀しさが怖いほど。

『ささやかだけれど、役に立つこと』のあとがきで村上春樹はつらくて訳す気になれなかったと語っている。全集でどのように触れているのか興味がある。

 本書の最後はチェーホフの死を描いた「使い走り」になっている。初めてカーヴァーを読んだときはチェーホフに近いものを感じたけれど、ここまで影響を受けているとは思っていなかった。

 淡々としているけれど、文豪の死を静かに見つめる筆致はとても味わい深い。
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