深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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上坂信男ら(全訳注)『枕草子 下』
枕草子〈下〉 (講談社学術文庫)枕草子〈下〉 (講談社学術文庫)
(2003/07)
上坂 信男、

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 さて後、ほど経て、心から思ひ乱るゝことありて里にある頃、めでたき紙二十を包みて賜はせたり。仰せ言には、「とくまゐれ」などのたま(は)せて、「これは聞しめしおきたることの有(り)しかばなん。わろかめれば、寿命経もえ書くまじげにこそ」と仰(せ)られた、いみじうをかし。思ひ忘れたりつることを、おぼしおかせ給へけるは、なほ、たヾ人にてだに、をかしかべし。まいて、おろかなるべきことにぞ、あらぬや。心も乱れて、啓すべきかたもなければ、たヾ、
  「かけまくもかしこき神のしるしには鶴の齢とな(り)ぬべきかな
あまりにや、と啓せさせ給へ」としてまゐらせつ。台盤所の雑仕ぞ、御使には来たる。青き綾の単衣〔取らせ〕などして、まことに、この紙を草子に作りなどもてさわぐに、むつかしきこともまざるゝ心地して、おかしと心のうちにおぼゆ。

『枕草子 下』「御前にて人々とも」より


 ようやく講談社学術文庫版の「枕草子」の最終巻。第二一八段から三〇〇段までと一本という補遺が28、そして書名の由来となった跋文が収録されている。

 また巻末には登場人物の一覧と年表、索引などがついていて便利。有名な「香炉峰の雪」のエピソードもこの巻に入っている。

 上に引用したのは「御前にて人々とも」という章段の一節。「よい紙などをもらうと嫌なことも忘れてしまう」という清少納言の言葉を中宮定子が覚えていてくれたことを書いている。

 こういった当時の宮中の様子が活きいきと描かれている文章に特に心が惹かれる。中宮定子の周りは常に笑顔が絶えない。
 時々気になるのは清少納言の階級意識。火事に遭った下僕が理解できない和歌を送って笑ったり、身分の高い男が下賤の女に褒められるようではよくないといった記述が見られる。

 その一方で、「うちとくまじきもの」の章段では、海女の生活の苦しさを想像して同情を寄せている。

 余説でも触れられているように、ここには自身の教養や趣味に対する強い自負が感じられる。兼好法師がかはらものを見たときのように、共感は寄せることはあっても、全く考え方が違うという認識があるんだろうと思う。

 インテリ層とそうでない層との対立みたいなものは、今の日本ではなかなか意識されないけれども、普遍的なものがあるのかなと思った。
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