深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
山本七平「『あたりまえ』の研究」
「空気」の研究 (山本七平ライブラリー)「空気」の研究 (山本七平ライブラリー)
(1997/04)
山本 七平

商品詳細を見る

 人間、生活が安定すると保守的になる、これもあたりまえのことかもしれぬ。なにしろ、昨日のように今日も食え、明日もまた今日のように食えるという状態になれば、この状態を維持していこうとするのが、生物としての人間にとっては、あたりまえのことだからである。
 と同時に安定は向上を目指す。といってもこの向上は、リスクのある変革的な冒険を伴わず、絶対安全のうちに、保守的な価値観において自己の生活の水準を上げようという方向に向く。そして社会全体がその方向を向き出すと、それに応ずるさまざまな機構ができていく。(中略)いわば快適な日常生活の継続はこれらの機構の維持にかかわってくるわけで、この維持と維持せねばならぬという意識がまた人びとを保守的にする。(中略)
 いわば、人びとの生活を安定させ、向上させ、それによって保守化させているものは近代かなのだが、一方においてはその近代化が要請する合理主義的運営と、それを担当する者の賛成とが否応なく近代的合理主義者を生み出す。これまたあたりまえのことなのであろうが、しかし彼らが前記の社会的機構を合理的に運営すればするほど社会は保守化するという矛盾を生ずる。

山本七平「『あたりまえ』の研究』


 山本七平ライブラリーの第一巻には、昨日の「『空気』の研究」とこの「『あたりまえ』の研究が併録されている。

 これは外国人に対して何気なく「日本には宗教法がない」といったところ、「では何をしてもいいのか」とあきれられた経験から、それぞれの人間が「あたりまえ」に思っていることについて語っていくもの。

 西欧では「宗教=規範」が「あたりまえ」になっているので、日本に宗教がないと聞くと、日本はアノミー(無規範)状態なのではないかと考えてしまったわけである。
 このように人びとは何らかの「あたりまえ=前提」を持っている。しかし、これは「あたりまえ」過ぎて、なかなか意識していないことが多い。

 相手が何の前提に従っているかがわからなければ、国際社会で相手のことを理解することはできないし、相手を説得することもできない。


「あたりまえ」について雑多な内容を語るといった形をとるので、「『空気』の研究」に比べると読みやすい。

 解説で日下公人さんが著者は山本書店店主としての顔を重視していて、経営者の側面も多分に持っていたと語っているが、本書にも指導者に必要とされる資質なども書かれていて面白かった。

 巻末の対談で、「日本人の経済合理性は強い」ということを語っていて、経済についても造詣が深そうですごい。

 それぞれの民族の歴史からその規範意識を浮き彫りにしていくやり方や、無意識的な部分を可視化して対策を立てようというスタイルは「『空気』の研究」にも通じる。

 特に国際政治や外交の面で重要になってくるのはどういう部分かということを書いている部分は勉強になった。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://deepseafishtank.blog123.fc2.com/tb.php/51-2f03a20b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。