深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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須賀しのぶ『天翔けるバカ flying fools』
天翔けるバカ flying fools  コバルト文庫天翔けるバカ flying fools コバルト文庫
(1999/12)
須賀 しのぶ

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(俺はエースになるために、ここに来たんだ……)
 それがたとえ、バカげていても。悪魔の称号だとしても。
 自分や、いま目の前にいるピロシキたちが敵のスコアのひとつとなるよりは、自分を狙う奴をスコアに変えたほうがいい。そしてこの基地で一番のエースになって、自分と同じ飛行機バカどもから、畏怖と憧憬をこめて「一度あいつと勝負をしてみたい」と言わせてやるのだ。
 ロードや、レッドバロンのように。
 ここは、愚かな夢を見た、罪深い騎士たちが集まるところ。
 来てしまった以上は、戦うしかないのだろう。炎にまかれながら天から墜落するその日まで、誰かを墜とし続けるしかないのだ。
「……なんか、バカみたいだなあ」
 リックは自重まじりに笑った。あまりにも不毛で泣けてくる。
「そりゃそうだ。バカじゃなきゃやってられるかよ。こんなこと」
 ピロシキの声に、パードレも深々と頷いた。

『天翔かけるバカ flying fools』


 ライトノベルのシリーズはかなり長くなったり、どの巻から読めばいいかわかったりすするので、私ようなライトな受容層にとっては敷居が高く感じられてしまうのですが、こういう一、二巻で完結する短いシリーズは嬉しいですね。

 この巻は連合国側に属する傭兵航空部隊(義勇軍)を舞台に、主人公リチャード・ハーレイ(通称リック)と部隊一の撃墜王(エース)リチャード・レイストン(通称ロード)のを主軸に、第一次世界大戦を描いている。

 主人公たちと戦うことになるドイツ側のエース・パイロットたちは実在する人物らしくで、レッド・バロンことマンフレート・リヒトホーヒェン、その弟ロタール、ナチスで活躍したゲーリングなどが登場する。
 第一次世界大戦では初めて航空部隊が戦争に投入された時代で、飛行機のパイロットはかなり優遇されていたらしく、その戦闘も騎士道的な精神が残っていたらしい。

 エースとは敵機を5機以上撃墜した人間に贈られる称号で、レッド・バロンはその技量と紳士的な態度で敵味方関わらず敬愛されたらしい。

 というようなことを、wikipedia で眺めながら読んでいた。作者は歴史学を学んだ人らしい。知らないことばかりだったけれど、その時代に魅力を感じた。

 大空への憧れに取りつかれながら、戦争に巻き込まれ、死と隣り合わせの生活をしている人間を通して変わりゆく時代の空気を巧みに描いていると思う。

 第一次世界大戦で戦争は個人のものから総力戦へと移り変わった。そんな中、最後に残った飛行部隊。英雄と称され最も華やかな部分を受けもちながら、現実の力に翻弄される。また貴族という階級もその存在意義が薄れていく。

 基調はコメディであるので、登場人物たちは底抜けに明るいが、そういった時代の空気をきっちりと描いている。

 作者はたぶんレッド・バロンを描きたかったのではないだろうか。主人公を含めた義勇軍のキャラクターも魅力的であるが、捕虜となったロードと対峙するシーンなどはその自信家で鷹揚な部分がよく出ていてかっこいい。

 義勇軍には各国の人間が参加していて、被撃墜王であるロシア出身のピロシキやイタリア出身のパードレといった脇役も作中で重要な役割を果たしているが、そういった人物を通して当時の各国の事情も伝わってきてうまいなと思う。
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