深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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Jack London『The Call of the Wild』
野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)
ジャック ロンドン,Jack London,深町 眞理子

光文社
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Nor did he open his eyes till roused by the noises of the waking camp. At first he did not know where he was. It had snowed during the night and he was completely buried. The snow walls pressed him on every side, and a great surge of fear swept through him—the fear of the wild thing for the trap. It was a token that he was harking back through his own life to the lives of his forebears; for he was a civilized dog, an unduly civilized dog, and of his own experience knew no trap and so could not of himself fear it. The muscles of his whole body contracted spasmodically and instinctively, the hair on his neck and shoulders stood on end, and with a ferocious snarl he bounded straight up into the blinding day, the snow flying about him in a flashing cloud. Ere he landed on his feet, he saw the white camp spread out before him and knew where he was and remembered all that had passed from the time he went for a stroll with Manuel to the hole he had dug for himself the night before.

(拙訳) 動き出したキャンプが立てる音によって目を覚まされるまで、バックは目を開くことはなかった。はじめ彼は自分がどこにいるのかわからなかった。夜の間に降った雪が彼を完全に埋め尽くしていた。雪の壁がどの方向からも押し迫り、恐怖が―野生動物が罠に対して抱く恐怖が、彼の身体を這い上がった。これは彼が自分自身の生から先祖の生へと戻りつつある証だった。というのも、彼は文明国に育ち、過度に快適な生活に浸った犬であったから、罠について知ることもなく、ゆえに恐怖を抱くこともなかったからだ。全身の筋肉が発作的に、本能的に収縮し、首から肩にかけての毛が直立する。獰猛なうなり声をあげ、目のくらむ日の光の中に向かって跳び出すと、雪がきらめく雲となって飛び散った。着地もしないうちに、白く染まったキャンプを見て彼は自分がどこにいたかを悟った。マニュエルとともにさまよい出た時から穴を掘って身を沈めるに至るまでの昨晩の出来事を思い出した。

Jack London “The Call of the Wild”


 ハーディの“Far from the Madding Crowd”を読んで、まだまだ一般文学を読みこなすには力不足だということを痛感した。そこで“The Wonderful Wizard of Oz”が読みやすかったことを思い出し、邦訳があっても未読の児童文学を中心に読んでいこうかと思い立った。

 そこで挑戦したのが、大江健三郎が影響を受けたと常々語っている「ニルスのふしぎな旅」の英訳版。ところがこれが想像以上に難物だった。固有名詞はスウェーデン語のままなので読み方がわからず、したがって覚えられない。序盤時系列が前後する部分があり、そこで混乱してしまった。

 大部でもあり、とても読みこなす自信がなくなり、いずれ日本語で読むことに決めてしまった。代わるものを探して iBooks のランキングを眺めていると、目に留まったのがジャック・ロンドンの「荒野の呼び声」だった。
 これは古本屋でもよく見かけるもので、その分量が少ないことを知っていたので、挫折することはないだろうと思ったのだ。


 この小説は、カリフォルニアで悠々とした生活を送っていた飼い犬バックが使用人によって売却され、アラスカに近い北の氷上でそり犬として使われることになる。

 誰に教えられることもなくバックは体験から学び、野生を取り戻し、チームのリーダーになっていく。持ち主を転々とし酷使され続けるバックだったが、信頼できるソーントンという男と出会い、平穏な日々を取り戻す。

 しかし、ソーントンは金鉱を探しに冒険へ乗り出す。森の中でバックは次第に野生を取り戻していった。そんな中、ソーントンがインディアンの襲撃により死亡する。怒り狂ったバックはインディアンを噛み殺し、狼の群れに身を投じる。その後、バックは伝説として語り継がれることになる。


 主人公のバックは犬だけれど、その能力はかなり犬離れしているように思われ、最初は違和感を覚えた。けれども、それは最低限にとどめられている。よくあるように、犬同士だからといって会話を通じて意思疎通ができるといった手法は取られていない。

 住み慣れた環境から引き離され、全く異なる過酷な環境をへ放り込まれる。誰も教えてくれないし、慣れていく時間の余裕もなく、死にさらされる。そこで身を持って生きる術を学ばなければならない。そんな中で、次第に野性の本能に目覚め、生き延びていく。その過程が徹底的に記述されていく。並大抵の犬ではないかもしれないが、一つの思考実験としてはすこぶる興味深い。

 北の大地を舞台にしているということで、その自然の描写も美しく、そこに挑む生物の営みが哀切に謳い上げられている、詩を思わせるような文章に出会うこともしばしばだった。

 ただそのぶん英文として読む上では、逆にネックとなりあまり読みやすいものではなかった。前情報も何もなく読み始めたので、主人公が犬だということに意表を突かれるし、会話も少ない。

 本当は次のような部分もかっこよくて、訳してみようかと思ったのだけれど、こなれた日本語にならなくて断念した。訳本でどうなっているか、今度調べてみようと思っている。

With the aurora borealis flaming coldly overhead, or the stars leaping in the frost dance, and the land numb and frozen under its pall of snow,this song of the huskies might have been the defiance of life, only it was pitched in minor key, with long-drawn wailings and half-sobs, and was more the pleading of life, the articulate travail of existence. It was an old song, old as the breed itself—one of the first songs of the younger world in a day when songs were sad. It was invested with the woe of unnumbered generations, this plaint by which Buck was so “strangely stirred. When he moaned and sobbed, it was with the pain of living that was of old the pain of his wild fathers, and the fear and mystery of the cold and dark that was to them fear and mystery. And that he should be stirred by it marked the completeness with which he harked back through the ages of fire and roof to the raw beginnings of life in the howling ages.

Jack London “The Call of the Wild”


 もっときっちり読めればよかったけれど、無機質で哀しいハードボイルドな物語にしびれた。
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