深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
須賀しのぶ『永遠の曠野 芙蓉千里3』
永遠の曠野  芙蓉千里III永遠の曠野 芙蓉千里III
須賀 しのぶ

角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング : 230263

Amazonで詳しく見る

「まあ、そんな顔をしては駄目」
 梅香はフミの頭をそっと撫でた。
「みんな、勘違いしているけれどね。恋っていうのは、幸せになるためのものじゃないのよ。その人がいない人生を歩むぐらいなら、彼と一緒に不幸になりたい。そう願う理不尽を、恋と呼ぶのよ」

須賀しのぶ『永遠の曠野 芙蓉千里3』


『芙蓉千里』『北の舞姫』に続くシリーズ完結作。真紅の花、少女、拳銃という装丁が今回も妖艶で素敵です。

 携帯サイト「小説屋Sari-Sari」で連載されていた本作。2巻分冊といううわさもあったが、ページ数はそれほど変わらず。ただ二段組になっている。

 連載版の評価がまちまちだったので近所の図書館に入るのを待っていたのだが、いっこうに所蔵されないので隣町まで足を運ぶことにした。
 前作で舞姫としてかつぎあげられることを嫌い、曠野へ独り飛び出したフミは山村健一郎と何とか合流する。山村は馬賊の頭、楊建明としての姿を表し、フミは仲間として認められるために奮闘する。

 一方、建明はネイセ・ゲゲーンに託された金塊と仲間を殺したセミョーノフへの復讐を理由にモンゴルの独立運動へ身を投じていくことになる。


 前巻で全てを投げ捨て一人の女として生きていくことを選んだフミ。そのフミが大草原を疾駆していくような、爽やかな恋物語が展開するのかと勝手に想像していたのだが、全く異なる展開にどぎもを抜かれた。

 この巻で展開されるのは、馬賊の荒くれどもの生き方である。血生臭い描写が連続する上に、飢餓による食人や同性愛的な描写もあり、かなりえぐい場面が続く。

 そしてロシア革命後の極東における赤軍、白軍の内戦、シベリア出兵後ずるずると駐留を続ける日本他の列強の動き、そのパワーゲームの最前線に置かれた極東共和国やモンゴルといった国の動きが同時に描かれる。

 第2部のシベリア出兵もそうだけれど、歴史の知識としてすっぽりと抜け落ちているところであり、流れを把握するのが大変。そこで日本軍の最前線で通訳として働くことになった黒谷の目を通して事情が語られる。それ自体はとても興味深いものではあったけれども、主人公サイドが後ろに引いてしまう嫌いはあった。

 それでも建明の辛抱強い工作活動の末に、セミョーノフ配下でモンゴルを支配していたウンゲルンと決戦を挑む場面は胸が躍る。それまでの思い展開を吹き払うような勢いがある。

 たとえ荒野に何の痕跡を残すことなく消えていくとしても、夢のために大きな物語のために命を燃やし尽くしたいとするバカの姿は、タイトルにふさわしい爽やかなものだった。


 シリーズ名からすると、この第3巻で描かれたモンゴルの独立の影で活躍した馬賊の姿を描こうとして構想されたのかもしれない。

 しかし、それにしては第1巻が少女小説として完成されすぎていたのかもしれない。主人公としてのフミが背景になってしまいがちな第3巻は、シリーズ全体としてみるとちぐはぐな感じがして、物足りなく感じるところが多かった。

 それでも後日譚としてフミのその後も描かれており、日本から大陸に渡り、大草原へ飛び出していった女性の一代記を歴史の中に描き出したこのシリーズは、なかなか他にはない面白いさを持っていると思う。

 この3年間、本当に楽しませてもらった。特に第1巻を読んだときの衝撃は忘れることができない。

 もうすぐ発売される文庫版では、単行本未収録の外伝も収録されるようなので、こちらは購入して手許に置いていきたいと思う。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://deepseafishtank.blog123.fc2.com/tb.php/370-f3ea1dc1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。