深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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村上宣寛『IQってホントは何なんだ?』
IQってホントは何なんだ? 知能をめぐる神話と真実IQってホントは何なんだ? 知能をめぐる神話と真実
村上 宣寛

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 キャテルの知能理論で有名なのは、知能が流動的知能Gfと結晶的知能Gcの二つの因子から構成されると考えた事である。流動的知能Gfは生物学的側面のgで、成人以降は減退する。空間能力や速度に関係する知能である。一方、結晶的知能Gcは教育や文化の影響を受けるgで、年齢を重ねても減退せず、むしろ上昇する知能である。言語能力や知識などに関係する知能である。なお、キャテルの分析によると、流動的知能と結晶的知能の相関は0.5程度あるので、上位因子として一般知能gが見いだされる。

村上宣寛『IQってホントは何なんだ?』


『「心理テスト」はウソでした』がおもしろかったので、引き続いて同じ著者によるこちらの本も手に取ってみることにした。

 特にミステリなどの漫画などでは、主人公の頭脳の明晰さを表現するためにIQ(知能指数)がしばしば登場し、その数値も180とか200とか、インフレ化している印象を持っていた。

 しかし実際のところ、それがどのようなものでどのように測定されるものなのか、問われれば言葉に詰まってしまう。(偏差値とごっちゃになって、標準偏差は10だと思っていたし)。その辺りをはっきり知るのも面白そうだと思ったのだ。
 本書は、知能に関する研究の歴史を振り返り、最新の知能研究までをまとめたものになっている。

 これほどIQという言葉が独り歩きしていながら、日本においては知能研究はひどく低調だという。とはいえ知能研究も諸説があるようで、「知能とは知能テストで測ったものである」というような笑い話のような定義も存在し、しかもそれが思いの外に人を喰ったものではないという。

 そんな知能研究の現状を、『「心理テスト」はウソでした』ほどの軽さはないけれど、愚痴っぽい皮肉な調子でまとめていく。

 当初は単純な反応の速さの優劣が議論されたがうまくいかなかったが、今の知能テストの元になったのは、怠惰な子どもと精神遅滞の子どもを見分けたいというフランスの児童教育からの要請だという。

 ここでは何歳児の児童の大部分ができるテストというのを作り上げ、そのテストで実年齢とどれぐらい離れたテストまできるかということで得点化し、それを平均100標準偏差15の集団内での位置を示したものという感じになるようだ。

 そのように知能テストが実用化される一方で、心理学の研究ではスピアマンが唱えた、全ての課題に関係する一般知能gと特定の課題のみに影響する特殊知能sとの二因子から知能を説明するモデルをはじめ、知能の構成因子を探る方向へ進んだ。

 そういった因子を整理した最新の3理論がここでは紹介されている。その中でも特に成功を収めているのが、キャテルーホーンーキャロルの3人によってまとめられたものでCHC理論と言われているらしい。

 ここでは一般知能gの下に16の一般因子を配し、さらにその下に特殊因子を配した3層のピラミッド構造に整理されている。その他、一般知能gを想定しないガードナーの多重知能理論やより包括的で野心的なスタンバーグの三頭理論が紹介されているが、今のところCHC理論に分があるようだ。

 知能テストは外国のものを訳して持ってこればよいというものではなく、日本の文化にあった問題に調整し、それを試して標準化するという作業が必要で、この「国境」が日本の研究の遅れにもつながっているとのことだ。

 後半では、知能に関するさまざまな疑問に答えるかたちになっている。年をとると知能は衰えるのか?、遺伝と環境どちらの影響が大きいか?、男女間に知能差はあるか?、人種間での差は?、知能テストから勤務成績を予想できるか?などなど。

 年齢とともに処理速度などは低下するものの、言語能力は上昇し続けそれを補う傾向があること、人種差・男女差をセンセーショナルに強調する向きもあるが、テストに反映される文化の差が大きいことなどは面白く読むことができた。


「頭の良さ」というのはデリケートな問題でつい目をそらしがちだけれども、「心理テスト」と同じようにその無知が差別を助長する可能性もある。

 統計的な記述も多く、特に因子分析法などがよく登場するので決して読みやすくはない。巻末に統計的知識の補足があるのも読み終わって気づく始末で失敗した。

 知能というものは複雑な代物で、タイトルから想像されるようなすっきりとした回答を期待していると肩透かしを食う。しかし心理学には100年以上に渡る研究の蓄積がある。そういったもがきの中で経験的につかみとられてきた一端を垣間見せててくれる貴重な一冊だと思う。
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