深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
村上宣寛『「心理テスト」はウソでした』
心理テストはウソでした (講談社プラスアルファ文庫)心理テストはウソでした (講談社プラスアルファ文庫)
村上 宣寛

講談社
売り上げランキング : 128729

Amazonで詳しく見る

 生まれた星座や血液型は変えようがない。それに対して事故の誘因等を詳しく分析すれば、避けられるものもあるはずだ。そうすれば、事故が減らせるはずだ。警察はこんな初歩的なこともわからないのだろうか。
 調査対象を血液型や星座などでグルーピングすれば、グループの差くらい出てくるのは当たり前である。それは年齢、性別、居住地、社会環境などに違いがあるからである。これらの要因を統制しないで、原因を血液型や星座と決めつける点が大きな間違いである。

村上宣寛『「心理テスト」はウソでした』


 出版当初、何かと物議をかもしたと記憶しているこちらの一冊。読まずにすませてしまっていたが、『心理学の「現在」がわかるブックガイド』で文庫版が出ていることを知り、読んでみることにした。

 本書は性格心理学が専門の著者が、一般に流布している性格検査方法の中に妥当性が疑わしいものがあることを暴露する啓蒙署になっている。

 血液型性格診断や心理テストなど、テレビや雑誌などでなじみぶかいものをはじめ、ロールシャッハテストやクレペリン検査など、公に認められている診断方法でさえも、ばっさり切り捨てられている。
「○型でしょ?」と訊かれ、「だと思った」とか「えー見えない」とか、そんな会話を目にするのは日常茶飯事だろう。

「血液型と性格が関係するということが示された研究はまだないんですよ」といって水を差すようなことは、もう流石にできない、それで会話が盛り上がるのなら問題ないのだろうと思っていた。

 しかし著者は、空気など読む必要がどこにあると、不粋だろうがなんだろうと、敢然と誤りを正そうとする。

 根拠となっているデータの集め方、分析の仕方を拾い上げ、その怪しさをあげつらい、診断項目が七色に解釈でき、実質何も語っていないことを説得力あるかたちで示していく。

 血液型を根拠に人事配置や子どもの接し方、叱り方が変えられ、公的なリソースが割かれているとしたら……。やれやれと内心ため息をついて済ませるというレベルではなく、暗澹として気持ちにもなる。

 ましてやYG検査やクレペリン検査など、学校や入社試験でも使われるような定評のある検査が実は、検査の安定性もその信頼性も中身の正しさも疑わしいというのは、かなりショックだった。

 クレペリン検査などはがんばりすぎてしまうとかえって情緒不安定と解され、悪い結果が出てしまう可能性があるというのも驚きだった。昔受けた時、できるだけ奥まで行こうと頑張っていたのが馬鹿みたい。

 第3章では、インクのしみに何を見出すかで判断を行うロールシャッハテストが取り上げられている。そこでは実際にロールシャッハテストの結果がどう解釈されるかの実例が載っている。こんな風に目の前で大真面目に語られたら、失礼ながら笑いをこらえられる自信がない。


 実名、番組名をバンバン出して攻撃していく著者の姿にははらはらしてしまうが、痛快で読みやすい本だった。

 自分のことを知りたい、これから深く関わる人がどんな人か知りたいというのは誰もが持つだろう。そこに都合のよい、耳触りのよい言葉が飛び込んできたら信じたくなるのは無理もない。

 けれど根拠の疑わしい方法で人が判断され、人の一生まで左右してしまうとしたら、その害悪は大きいと思うし、著者のいうように倫理的な問題もはらんでいる。

 私も統計の詳しいことはわからないので正しい判断を下せるかわからないが、テストを用いる人が信頼性や妥当性はどうなんだろうと思うようになる必要があるのかと思う。

 少し癖のある本であるが、とても有益な一冊であると思う。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://deepseafishtank.blog123.fc2.com/tb.php/348-311eb2bc
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。