深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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城繁幸 『7割は課長にさえなれません』
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城 繁幸

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 日本企業を敬遠するのは、なにも留学生だけではないということだ。まだあまり知られてはいないことだが、すでに東京、シンガポール、香港を結ぶ横断的転職市場は形成されつつある。
(中略)
 さらにいえば、この流れは完全に新卒市場にも波及している。東洋経済新報社が二〇一〇年卒業予定の学生に対して実施した就職希望調査において、東大、京大それぞれのトップ10に日の丸メーカーが一社も入らない一方で、外資系金融、コンサルといった年俸制企業が三社もランクインしているのだ。
 これらの動きは、一見するとつながりがないように見えるかもしれないが、すべて一つの方向を指し示している。要するに、以前は外国人に限られていた「日本企業離れ」の傾向が、国籍や地位を問わず、(少なくとも選択肢のある)若手全体に拡大しつつあるということだ。
 では、彼らが日本企業を敬遠する理由とは何だろう?
 それは、年功序列制度にある、初任給から始まり、50代半ばでピークに達する賃金カーブを思い描くといい。あれは要するに、その世代における平均賃金の推移を示す曲線である。つまり「少なくとも自分は平均以上に優秀であるはずだ」と自負する者にとっては、日本企業は割に合わない人生の投資先だ。そして、そう判断して外資をめざしたり、日本企業を三年で辞める若者が増加しているということは、今後の賃金カーブの低下を予想する人間がふえているということだ。これが、人の流れが変化した理由である(図10)。
 もちろん「自分はつねに平均以下だ」と割り切っている人間にとっては、終身雇用はいまも変わらず魅力的な制度である。そういう人材だけで商売が成り立つかどうかは別問題だが。

城繁幸 『7割は課長にさえなれません』


 先日、『はじめての課長の教科書』を読んで関連書籍を眺めたりしていたら、読後の余韻に冷や水を浴びせるようなタイトルが跳びこんできた。

 よく見てみると、著者は『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の城繁幸さんで、若者三部作の最終巻という位置づけらしい。

『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は流行がだいぶ落ち着いてから読んではいるものの『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか』は未読で、どうかなと思ったけれど、先に挙げた本との関連もあるで読んでみることにした。
 タイトルに釣られて読んでみたものの、課長の問題に限ったわけではなく、ややミスリードな気もする。閉塞感に覆われている日本の労働環境のはらむ問題全体を扱っているのだから。

 ここで著者は、大日本商事という架空の会社を設定し、そこで働く人間たちをモデルケースとして、それぞれの立場から労働環境の問題を浮き彫りにしていく。

 正社員と同等の仕事をしながら正社員になれない派遣社員、第一線を退きやりがいを失った管理職、出世街道を外れたものの正社員の地位にしがみつかざるを得ない中堅社員、二人目の子どもが欲しくても職を失う心配から踏ん切れない一般職の女性、ベンチャー企業と大企業との間で悩む卒業間近の大学生、職務経歴がないため企業から見向きもされない博士課程修了者などなど。

 私たちが何となく感じている出口のない不安、不満を共感できる形ですくい出した後、著者はそれらの原因をはっきりと指摘する。

 職務内容ではなく年齢で賃金が決まる慣行や賃下げや人員整理のできない硬直した雇用制度。それが停滞、衰退していく社会の中で既得権益層の保護につながり、弱者、特に後発の若者にしわ寄せされているからだという。

 とすれば施す処方箋は自ずと決まってくる。雇用市場を流動化することだ。著者は最後にそれが実現された際の幸せな結末を描き出す。そこでは鬱屈していたキャラクターたちが、社会に居場所を見つけ前向きに歩き出すのだった。


 今の時代を生きる一人として、ここに描き出される閉塞感には共感を覚えます。しかし著者の楽観的な未来像を素直に信じることはできません。

 雇用の流動化は望ましいのかもしれないけれど、そんな荒療治に日本は耐えられるのでしょうか。というよりも、そこに抵抗を感じるのは単に激動する社会を渡っていくのに不安だからということかもしれません。とはいえ、このまま緩やかな衰退を受け入れる気にもなれませんが。
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