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深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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I grew convinc'd that truth, sincerity and integrity in dealings between man and man were of the utmost importance to the felicity of life; and I form'd written resolutions, which still remain in my journal book, to practice them ever while I lived.
私は人と人との付き合いにおいての正直、誠実、高潔さが人生の幸福に最も重要なものであると認めるようになった。私は終生これらの美徳を実行すると決め、日記帳に書き留めたが、それは今でも残っている。

Benjamin Franklin『Autobiography of Benjamin Franklin』


 自分で購入した洋書で未読のものは、勢いで買ってしまった三島由紀夫の『Forbidden Colors』だけになった。実はこの『禁色』は初めて買った洋書で、1ページ目で挫折した経験から、再び手に取る意欲がなかなか湧きません。

 というわけで、iPhone 用のアプリ「iBooks」でダウンロードした作品を、初めて買ったパソコンについてきた研究社の英和中辞典を epwing 形式の辞書が使えるアプリ「EBPocket」に入れて、出先での空き時間にちょこちょこ読み進めるのを試しています。

『Winnie-the-Pooh』を読み終わって次は何を読もうかとストアを眺めていたら、すぐに目に留まったのがこの『フランクリン自伝』でした。
 発行元は「Project Gutenberg」でもちろん無料、デール・カーネギーの著作でもおなじみで今でも広く読まれている作品でもあり、分量もそれほどでもないということで挑戦してみることにしたのでした。


 軽い気持ちで読み始めたものの、今の力ではかなり難しかった。語り口が割りと冗長な感じで、関係代名詞や分詞を使って文章がどんどんとつながっていく。200年以上前の英語ということもあって古めかしくもあって、なかなか歯が立たない。

 当時の活版印刷の状況や交通事情、政治形態などを知らないと単語の意味をとるのにも時間がかかってしまう。領主制といったことも関わってくると、植民地時代のアメリカ史の知識も必要になってくる。


 この自伝の内容はというと、老いたフランクリンが子孫のために役に立つようにと自らの半生を振り返ったもの。先祖のことから、綱渡りのような印刷事業を勤勉と無欲で成功させ、次第に公共の事業へと関心が移っていく姿が描かれている。

 その中でさまざまな人物が現れては去っていき、また自らの失敗談なども語られる中で、教訓が引き出されていく。自己啓発本の元ネタといわれるというだけあって、どれも味わい深い。

 しかし教訓を引き出すだけでなく、それを実践する力がすさまじい。上に引用したものは、人生の最初期に導き出された教訓だが、それを書き留めたものが老年に到るまで残っているというのに驚かされる。

 この教訓を教訓だけにとどめず実践する方法論は有名な「13徳」にもつながっているのだろう。これは道徳の完成を志し、そのために必要なことを13項目に分類したもの。

 フランクリンはこれらの項目に優先順位をつけ、1つずつ注力する項目を決め、1日の最後に徳に背いたかをモニターして、努力を要さずにクリアできるようになったら次の項目に移るという方法をとった。こういったチェックリストを使った生活を続け最初は苦労したものの、身につけた徳が他の徳の習得を助けるなどして次第に効果を収めるようになったということが書き残されている。

 このよい習慣を身につけるために、具体的な方法に落とし込んでいく姿こそ何より学ぶべきだろうと思う。


 というわけで、細かい部分ではかなり読み落としがあると思う。しかし、大家族の中で資源も少ない中、節制した生活・勉強を続け、事業を成功に導き、公共に奉仕するといった姿を見せ付けられ、ため息しか出ないけれど、波乱に富んでいて文句なしに面白い。

 アメリカで初となる公共図書館を作ったり、仲間内で意見を交わすサロンのような場所を設けたり、時代の空気を感じさせるところもよかった。

 この上に、科学的業績まで残しているのだから、本当に驚いてしまう。


 後半は、フレンチ・インディアン戦争と言われるらしい事件で兵站に携わった苦労話が中心になって、アメリカ史を読んでいるような内容になって難しい。

 本編は長いのでなかなか集中して読むのには骨が折れるけれど、その後に収録されている補遺は短いものながら面白いものが多くて比較的読みやすい。

 特に「笛」といわれる章はよかった。著者が子どものころ、お小遣いを握りしめていったおもちゃ屋で他の少年が持っている笛がどうしても欲しくなり、お小遣いを全部使って譲ってもらった。得意になって家に帰ったところ、家族にそれだけあれば何個も笛が買えると笑われ一気に気分が冷めてしまったという。

 それ以来、何かが欲しいという衝動に襲われたとき、「おもちゃの笛に大枚をはたくことになるんじゃないか」と自分を戒めるようになったという。

 成長した後、改めて世間を見回してみると、「おもちゃの笛に大金を払おうとする人」、つまり衝動に流され物の価値判断を誤り、多大なコストを払ってしまう人間がいかに多いかということに気づいたという。そしてこれが人間の不幸の原因になることがなり多いのではないかとしている。

 ほんの子どものころから、失敗から学ぶところは変わらないんだなという気がする。
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