深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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ピーター・アトキンス『ガリレオの指』
ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
(2004/12)
ピーター アトキンス

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 われわれの周囲の世界では、花びらが開く、木が伸びる、考えが形成されるといった複雑な事象が起きて、乱雑さが減っているように見えるが、そうした事象は何かの作用がないと起きない。その作用が、どこかほかの場世に、より大きな乱雑さを生み出している。正味の効果は、何かを作り出す事象で乱雑さが減少して生じるエントロピーの変化と、何かを動かしてエネルギーを散逸させる事象で乱雑さが増して生じるエントロピーの総和であり、その結果はエントロピーの増大となる。全体として乱雑さが増すわけだ。このように、秩序が発生する現象では、見かけのカーテンをめくれば、どこかにより大きな乱雑さが発生してるのがわかる。われわれは、いや、すべての構造物は、カオスすなわち乱雑さが局所的に減少した存在にすぎないのである。

ピーター・アトキンス『ガリレオの指』


 時々、SFなどを読むこともあるので、そういうものがもっと楽しめるようになればいいなと思って手にとってみた。

 本書は、数十ページで現代科学の10の分野を概説していく驚異的なポピュラー・サイエンス。具体的にいうと、進化、DNA、エネルギー、エントロピー、原子、対象性、量子、宇宙論、時空、算術の10の分野。

 なぜこのタイトルかというと、フィレンツェの科学史博物館にガリレオの指の剥製が残っているらしく、実証性と普遍性を要件とする科学研究の幕開けを象徴するものとして、またその肉体は滅びても科学的な方法により得られた知識は肉体を越えるという意味を込めて採用されているという、科学礼賛の書。
 個々の領域に割かれている分量は多くはないものの、科学史にその足跡を残した研究者の逸話をまじえながら、図版を絡めて理論的な部分に入っていくので比較的読みやすい。だけど、高校時代に文系を選択した時点で科学の知識が止まっている私にはかなり難解でした。

 特に、第六章の対称性あたりから、議論はかなり抽象的でイメージしづらいものになってくる。と、ほとんど字面を追ったレベルで、難解な部分は読み飛ばして何とか通読したという感じ。もっと勉強しないとね。

 異なるように見える現象が、細部に分け入っていくうちに別な側面に光を当てていただけで、抽象化の階段を上がり、その背後にある理論に統一されていくのは驚きだった。そして、それがエピローグでの万物理論の予感へ無理なくつながっていくような構成が巧みでおもしろかった。それぞれ別個の領域で完結してしまいそうなものが、有機的につながっているところが優れたところで、刺激的であり、分かりやすさを増しているところだと思います。


 これだけ幅広い領域を一人でカヴァーして一般向けにポピュラー・サイエンスを書くことができる人物がいるというのがすごい。それだけでなくカントやコンラッドまで引き合いに出してくるぐらいだから立つ瀬がない。「赤の女王」は「鏡の国」のほうだよねと思った以外は「そうなんだ」とただただうなずくばかりなのでした。

 他の本も読んでみて、また読み返したい一冊ですね。それにしても最後にはかなり人間原理的な部分まで踏み込んでいたのにびっくりしました。
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