深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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E. アロンソン『ザ・ソーシャル・アニマル』
ザ・ソーシャル・アニマル―人間行動の社会心理学的研究ザ・ソーシャル・アニマル―人間行動の社会心理学的研究
E・アロンソン,岡 隆,亀田 達也

サイエンス社
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 魅力的な相手と話しているのだと考えた被験者は、あまり魅力的でない女性と話しているのだと考えていた被験者よりも、相手のことを、より均整がとれ、ユーモアがあり、社会的に適応していると評定した。これは驚くに値しない。しかし、驚くべきことは次の事実だった。独立した観察者が、会話の中の女性の側だけのテープ録音を聞く機会を与えられたとき(写真を見ずに)、男性のパートナーが身体的に魅力的だと考えていた女性に対して、ずっとよい印象を持ったのである。つまり、男性のパートナーは自分が魅力的な女性と話していると考えていたので、相手の最良の、もっとも輝かしい特徴を引きだすような仕方で会話を進めたのである。これらの独立した観察者は、彼女の会話を聞いた場合には、パートナーによって美しくないと考えられていた女性に比べて、より魅力的で、自信があり、活発で、暖かいという評価を与えたのである。したがって、身体的に魅力的な人は、自分自身のことを「よい」とか、人から愛されるとか考えるようになるのかもしれない。なぜならば、彼らは常にそのように扱われるからである。逆に、不器量な人は、常にそのように扱われるがゆえに、自分のことを「悪い」とか、愛されていないなどと考えてしまう可能性がある。結局、人は、自己概念と一致するように、すなわち、他人からまずどおように扱われているかということと一致するような仕方で、行動するようになるのかもしれないのである。

E. アロンソン『ザ・ソーシャル・アニマル』


 いつの間にかもう年の瀬になるということで、部屋の片づけをしていたらこの本を見つけた。そういえば最終章を読まずにしまっていたなということで、掃除を早々と切り上げて読んでみることにした。

 本書は、社会心理学者の著者が各テーマごとに社会心理学の研究を広範に紹介していくもの。タイトルはアリストテレスの「人間は社会的な動物である」という言葉からとられている。

 450ページ近くの分量がある上に、2段組でテキストがびっしりという、読まれることを拒絶するような見た目には凶悪な代物。ところが読み出すとこれがおもしろい。実際に講義を聴いているような語り口で、ぐいぐいと読み進めることができる。
 社会心理学の足どりをなぞりながら、アロンソンの第一法則と著者が名づける「異常なことをする人びとが必ずしも異常というわけではない。」という本書のテーマが納得できるように巧みに構成されている。ある社会的な条件がそろえば、とても信じられないような行動に出てしまう、ごくごく普通の人びとが。

 この本を読んでいるとヒトというものは、随分と単純で即物的で、身も蓋もない存在なのだという気がしてくる。魅力的な女性と話していると思い込んでいる男性が相手の女性の魅力を引き出してしまうというのは、いかにもな話ではあるが、いざ実験によって示唆されると嫌なすごみがある。

 私たちは周囲の状況から、様々な影響を受けている。しかしそのことには往々にして気づかない。もちろんその仕組みはヒトが生きていくのに不可欠なものであるが、時として重大な問題を引き起こす。偏見を持ったり、煽られたり、自分を守るために他人を傷つけたり……。

 結局のところ、ヒトは身も蓋もない存在だということを知ることことからはじめないといけないのだろう。それで社会に存在する問題が解決するかはわからない。しかし心のはたらきに左右されっぱなしでは何も変わらない。描き出される「ヒト」が目を背けたくなるものだとしても、それを一つずつ拾っていくことで何かが変わるかもしれない。そんな著者の思いが伝わってくる。


 社会心理学の研究手法についても詳しく紹介されていて、引用文献の一覧も付いているので、詳しく内容を掘り下げていくこともできるようになっている。

 ミルグラムの実験やジンバルドーの監獄実験など、社会心理学には物議をかもした実験もあって、当然のごとく今では再現はできないだろう。しかしそこまではできなくとも、実験の参加者には仮想的な状況を設定してその影響を測ることになる。そこで気をつけるべきこと、倫理的な問題へのフォローもあって参考になる。

 ちなみにメインとなる部分の目次はこんな感じ。

第一章 社会心理学とは何か
第二章 同調
第三章 マスコミ、宣伝、説得
第四章 社会的認知
第五章 自己正当化
第六章 人間の攻撃
第七章 偏見
第八章 好意、愛、対人的感受性
第九章 科学としての社会心理学
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