深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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平田オリザ『演劇入門』
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平田 オリザ

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 しかし、一方で、私たちは、発語の際に、常に、例えば相手が自分の言っていることをどのくらい理解しているかを気にしながら話している。それだけではない。相手との距離、部屋の大きさ、外からの雑音などなど、さまざまな要素から、無意識のうちに影響を受けて、私たちは他者と言葉を交わしている。すなわち私たちは、主体的に話していると同時に、環境によって「話をさせられている」のだ。
 あまり難しく考える必要はない。例えば、汽車の中で「自分から話しかける」に手を挙げた人でも、相手が明らかにやくざ者に見える男だったら、自分から声はかけないだろう。逆に、「自分から声をかけない」というほうに手を挙げた人でも、相手が何かものでも落とせば、声をかけずにはいられないだろう。私たちはこのように、常に、私たちを取り巻く現場によって、喋らされているのだ。

平田オリザ『演劇入門』


 今の日本で最も精力的に活躍されている劇作家、演出家の一人ではないかと思われる平田オリザ氏。というか、現代劇の方面にはとんと疎いので確かなことはわからない。

 そんな私が著者の名前を知っているのは、かなり前にラジオでの対談を聴いてことがあるから。その内容は今ではおぼろげになってしまったけれど、著者のことは強く印象に残っていた。

 本書は、著者が自らの劇作の方法、演出の方法を語っていきながら、演劇について考えていくもの。
 舞台が幕を開け、現れた人物がいきなり「美術館はいいなあ」と感想を漏らしたら説明くさいと感じてしまう。高校生の書く演劇などには、こんな不自然なセリフが出てきて、一気に興が醒めてしまう。

 ではなぜ説明くさいセリフを不自然と感じるのか。その問題に答える形で、著者の演劇の方法を惜しげもなく披露していく。若い書き手に語りかけるような、真摯で優しい文章は独特で好感が持てる。

 それは端的にいえば、「他者」がいないということになる。身内同士の「日常会話」では話が進まない。他者とコミュニケーションを迫られる状況になってはじめて、人は情報を交換する必要が出てくる。それぞれが違う「コンテクスト」を持っているから、緊張感を持って、コンテクストをすり合わせていく「対話」が生まれる。

 地の文がない演劇にとって、この「対話」こそが、物語の駆動力となる。こういった場所や人物を設定すること。そしてとにも書き始めること。そして最後まで書き上げること。それが演劇を書くということになる。

 そして対話の少なくなっている社会、けれどもそれが求められている社会において対話に意識的であらざるを得ない演劇が役割を果たすことがあるかもしれない。そういう思いが演劇の世界へ誘う著者の熱意になっているようだ。


 演劇にはあまり触れてこなかったけれど、一度観にいってみたいなと思った。演劇を書く人、物語をつむぐ人には参考になる本だと思う。
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