深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ロジャー・R・ホック『心理学を変えた40の研究』

 彼らの主張では、私たちが寝ている間、脳幹にある脳の一部分が、周期的に活性化され、電流を発生させる。この脳の部分というのは、私たちが起きている時、体の動きや感覚器官からの入力情報を処理することに関わる部分である。眠っている間、私たちの感覚と運動能力は停止するが、脳内のこの部分は停止しない。このことが、ホブソンとマッカレーが言う、神経を流れる電流による意味のない表出へとつながる。こうした電流の一部は、思考したり推論したりする、高度な機能を持った脳内のほかの部分にも届く。すると、脳は電流を統合し、そこからなにか意味を読み取ろうとする。このために、イメージや思考、さらに筋書きのあるストーリーさえもが作り出される。目覚めてからこの精神的作用を覚えていると、私たちはこれを夢と呼び、さまざまな意味をそれに与えようとする。しかし、ホブソンとマッカレーに言わせれば、そもそも夢に意味などないのである。

ロジャー・R・ホック『心理学を変えた40の研究』


 今ではだいぶ変わってきたのかもしれないけれど、一般の心理学のイメージと実際の心理学のイメージは少し違うところがあると思う。いざ授業を受けてみると、錯視図形や動物実験の話になって、きょとんとするとか。

 一見「心」に取り組んでいるとは思えない奇妙な形になっているのを理解するには、やはり心理学史を知るのが手っ取り早いだろう。客観性・検証可能性を担保しながら心を研究するといった難しい問題を解決するために、たどった道筋はそれ自体興味深いものがある。

 とはいえ、なかなか取っつきやすいものも少ない気がする。流れとしてではなく、心理学に大きな影響を与えた研究を紹介するといった形式は珍しいなと思ったけれど、タイトルを見てすぐにおもしろそうだなと思った。
 この本は文字通り、心理学を変えたといってもいいような重要な研究を40本ピックアップして、並べたもの。

 各研究は次の10章に分けられてい。「生物学とヒトの行動」「知覚と意識」「学習と条件づけ」「知能・認知・記憶」「人間の発達」「情動と動機づけ」「パーソナリティ」「精神病理学」「心理療法」「社会心理学」。それぞれの章には4本の研究が収められている。

 主要な研究が幅広く収録されていて、さらに仮説や目的とそれを検証するための実験や調査などの手続きが紹介されていて、心理学の雰囲気がよく伝わってくる気がする。個々の研究は独立しているので、興味のあるところを拾い読みしていってもいいし、心理学をあまり知らない人にもいい内容だと思う。

 また後続の研究やレファレンスの紹介もなされているので、興味のある分野を掘り下げていくこともできる。そして何より、過去のセンセーショナルな実験から次第に整備されてきた心理学の調査・実験を行う際の倫理的な側面にも触れられていて、参考になる面もあるだろうし、誤解の解消にもつながるのではないだろうか。

 惜しむらくは、図版が少なく、400ページぎっしりと文字がつまっているので、とても読みやすいというわけにはいかない。そういったことを抜きにしても、興味深い本であるのは間違いない。


 個人的におもしろかったのは、上に引用した夢の研究。外界からの入力がなくても、脳内での何らかの活動が生じることがあって、それが生々しい体験を生むようなことがあるのかもしれない。そう思うといろいろと想像が刺激されておもしろかった。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://deepseafishtank.blog123.fc2.com/tb.php/296-205b2c8f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。