深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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W. B. イエイツ(編訳)『ケルト幻想物語』
ケルト幻想物語 (ちくま文庫)ケルト幻想物語 (ちくま文庫)
井村 君江,W・B・イエイツ

筑摩書房
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「おおどうか、私の哀れな魂に慈悲をおかけ下さい」と司祭は懇願した。
「おや、何だと! では、おまえにも魂があると言うのか」天使は言った。「どうしておまえは魂を見つけたのか、言ってみるがよい」
「あなたが姿を現わされてからずっと、魂は、私の中で打ちふるえております」司祭は答えた。「以前に魂のことを考えなかったとは、私はなんと愚か者でございましたろう」
「まったく愚か者だ」天使は言った。「もし、学問や知識が人間に魂があることを教えないのなら、それはいったい何の役に立とうか」
「おお、貴方様」司祭は言った。「私が死ぬ運命にあるのでしたら、どうぞ教えてください。いったいどのくらいで天国に着くのでございましょうか?」
「お前は決して天国に着けはしない」天使は言った。「お前は天国の存在を否定しているではないか」
「では、私は煉獄にまいるのでございましょうか?」
「おまえは、煉獄をも否定している。おまえは、まっすぐに地獄へ堕ちねばならぬ」と、天使は言った。
「しかし貴方様、わたしは地獄も否定しております」司祭は応じた。「だから、あなたはわたしを地獄へ送り込むことはできません」

W. B. イエイツ(編訳)『ケルト幻想物語』「司祭の魂」


 このブログを始めた頃にイエイツの『ケルト妖精物語』のことを書いた。この『ケルト幻想物語』はその姉妹編になる。

 というか、もともとはイエイツがケルトの民族伝承を集めた2冊の本をまとめた。その訳書から文庫化の際に、妖精に関するものを抜き出したのが前者、その残りをまとめたものが本書ということになるらしい。

 そもそもこの本を手に取ることになったのは『燃えあがる緑の木』でイエイツに興味を持ったことと、某18禁サウンドノベル(のアニメ)でクー・フーリンのことを知ったからである。だから、本当はこちらが目当てだったのだけど、当時『ピーター・パン』を読んだので『妖精物語』から手をつけたのだった。
 なかなか機会がなかったけれど「Fate/ stay night Unlimited Blade Works」を借りてみたのと、カルチャーラジオでケルトに関する講座が始まったということもあって、埃を払ってみた。

 この本では、「魔女、妖精学者」「聖者、司祭」「悪魔」「王と戦士」「悪霊」などのセクションに分けられ、冒頭にそのセクションの概要を述べた短いコメントのあと、関連する詩や物語が収録されている。

 妖精だけでまとめられていた「妖精物語」と比べるとごった煮な感じで、少しまとまりに欠けるような印象が否めない。けれども個々のエピソードは面白く読めるものも多かった。

 すぐに気づくのは、やはりイエイツがアイルランド出身ということもあって、カトリックの影響がかなり強く感じられること。特に、上に引用した「司祭の魂」は魂を信じない学識のある司祭が罰を受け、最後には救われるという道徳物語。そこから得られる教訓も素朴で好きだった。

 カトリック一色かというと、全くそんなことはなく、常若の国や悪霊、幽霊など、その土地の伝説伝承らしいものも多く含まれている。それらが融合した物語たちは、奇妙でコミカルで、時々残酷でもある。独特な雰囲気が興味深い。

 中には、日本のおとぎ話とそっくりなものもあって、遠く離れた国々で共通の要素が現れるのがすごく不思議。


 肝心のクー・フーリン(ここではク・ホリン)はというと、「王と戦士」の項で登場こそするものの、冒険譚が出てくるわけではなく、当てが外れてしまった。それに関しては別の文献をあたるしかなさそううだ。
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