深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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こうの史代『この世界の片隅に』
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子供でも
売られても
それなりに
生きとる

誰でも何かが足らんくらいで
この世界に居場所はそうそう
無うなりゃせんよ

すずさん

こうの史代『この世界の片隅に』


 自転車で出かけようと思った。しかし目的もなくポタリングしてもあまりおもしろくないという先人のアドバイスがある。そこで普段通うにはやや遠い図書館まで出かけることにした。

 我ながら馬鹿だなと思いつつ、遠出の口実になれば何でもよかった。一日で読んで帰ってくるならマンガである。隣の市の図書館にこの作品があることは知っていて、距離も手ごろ。行き先は決まった。

 こうの史代さんの作品は、『夕凪の街 桜の国』『長い道』に続いて三作目。この『この世界の片隅に』は『夕凪の街 桜の国』と同じく、第二次世界大戦時下の広島を描いた作品。
 広島に生まれた絵の好きな女性すずが会ったこともない男性と結婚し、家庭を築きながら激しくなる戦争に入っていく姿が描かれている。

 見ず知らずの男女が結婚して、次第に心を通い合わせていく姿がとても好ましく移る。お互いの過去のこと、人間関係もわからないまま、しかし日々を積み重ねていって夫婦になっていく。その微妙なぎこちなさがおかしいけれども、決して不幸なことではなく豊かな関係になっている。

 こうした夫婦間の関係は『長い道』でも描かれていたが、本作では「家」に入るという夫婦以外の関係も交えて描かれるので、より複雑なものになっている。

 戦争を扱う以上、死は避けては通れない。この作品でも中巻の終わりから空襲が激しくなる。そして原爆の投下が待っていることもわかっている。しかしこの作品では戦争のむごたらしい場面はそれほど描かれない。その代わりに一人の少女の死と主人公の右腕の喪失が徹底的に描かれる。

 その選択はかなりリスクを伴うものだったろう。下巻の「あとがき」を読むと、作者は死の描き方をかなり意識していることがわかる。

 悲惨な場面を描き連ねなくても、理不尽さ、悲しさが痛いほど伝わってくる。そしてその悲しみを抱えても生は続いていく。その生き残った人々の生を見ていると、こういったことがあったことは忘れてはいけないんだなと思う。さりげない、押し付けがましくない。だが不思議とそう思う。


 物語もさることながら、絵がとても美しい。トーンをあまり使わない、手書きの絵で緻密に描きこまれている。まるで木炭画や水彩画を見ているような、淡く柔らかい絵が心地よい。

 構成や手法も実に緻密に練られている作品のようで、急いで読み切ってしまうのはもったいなかったように思う。ちゃんと購入して、じっくり読みたいなと思った。
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