深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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手塚治虫『人間昆虫記』
人間昆虫記 (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)人間昆虫記 (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)
(1995/03)
手塚 治虫

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結局
私の手元に残ったものは
一億五千万の
小切手だけ……

桐郎さん あなたも私も
あんまり
得しなかったわね……
私 あなたを売ったけど
それはただ ひとりに
なりたかったからだけよ

だから
こんな小切手なんか
海へ流しちゃおうと
思うの……

というと
詩的で
しょ

だけど私は
もっとスノッブ
なんだ

海へ
沈んで
もらうのは
こっちの
ほうよ 

手塚治虫『人間昆虫記』


 今まで読んできた手塚治虫の「大人向け」の作品について調べていると、よく言及されている印象があるこの作品。

 出会った人間の才能を吸収し、華麗に変身を繰り返す女性、十村十枝子を主人公にし、彼女の奔放な生き方とそれに振り回される人間たちの姿が描かれている。

 あらゆる手段を駆使して名声を獲得してゆく十枝子の姿は『MW』結城に似ていて、女版『MW』といった感じがする。
 政治的な問題を絡めつつダイナミックに展開した『MW』に比べればスケールはやや小さいかもしれないが、こちらも現代社会のはらむ問題を鋭く切り出しているように思う。

 利用できるものは利用しつくすものの愛は得られず、しかしたくましく生きていく十枝子と、男に利用しつくされながら最期に愛を得て、しかし死んでいくしじみの姿は、女性の生き方の難しさを感じていたのかもしれない。

 かといって、引用したところのように過度にセンチメンタルにも流れず、また勧善懲悪的な結末をつけてよしとするのでもない。そこがとても好きだ。


 やはり印象的なのは、十枝子が変身するときに訪れる実家の場面。そこには死んだ母親の蝋人形が置かれ、あらゆるものが雑然と散らばっているのだった。
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