深海魚の水槽
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河野稠果『人口学への招待』
人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)
(2007/08)
河野 稠果

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 以上から得られる含意あるいは教訓の一つは、現在の日本人口はすでに相当なマイナスの人口モメンタムを内蔵しているのであるから、将来の人口減少がほとんど決定的であると捉えざるを得ないことであろう。これはいわば人口の〝借金〟であり、〝累積赤字〟である。このような状況で、出生率がある程度回復しても人口が長期的に減少するのは必然である。一方ではもちろんわれわれは以上の〝人口借金〟を減らすために出生率を回復させる有効な政策を打ち出す必要が大いにあると同時に、他方すでに既成事実になった「人口減少社会」への対応と適応を現実的に設計しなければならないということである。

河野稠果『人口学への招待 』


 日本はすでに人口が減少時代に突入したということで、少子化について知りたかったので本書を手にとってみた。

 人口学とは人口を変化させる要因についての学問であり、出生、死亡、移動などの基本的なものから、政治や社会、生物学的な要因までさまざまなものとの関連で語られている。

 本書はコンパクトながら基礎的な部分から書き起こした人口学への入門書で、合計特殊出生率や平均寿命など、よくニュースなどで耳にする言葉がどのように算出されているか解説されている。

 慣れない分野であるため、基礎的な部分の説明も若干難しく感じられたが、常識とは違う人口への話も多く興味深かった。例えば戦後の平均寿命が伸びたというのは老人の死亡率の減少よりもむしろ、乳幼児や死亡率や結核などによる若者の低下したことによる影響が多いのだという。

 また少子化の原因をさぐる経済学的なモデルは、子どもを持つことのリスクが増加したと考えるものなど様々あるなかで、避妊法や晩婚・子どもを持たないことを許容するような価値観・道徳が浸透したことにおく「伝播・拡散理論」が一部地域では現実によく適合するというのもおもしろかった。
 人口学はモデルをつくって人口について研究することが多い。例えば生命表は毎年10万人が生まれる集団を仮定し、所与の死亡率をもとに各同時代集団(コーホート)がどれだけ残っていくかを表にしたものである。あるコーホートが全て死ぬまでの延べ年数を基数で割ったのが平均余命であり、出生時からのものが平均寿命になる。

 さらに出生率もある値で固定すると、人口は一定の構造(人口ピラミッド)を持った集団に収束する。これが安定人口モデルである。

 ここで現在の日本の出生率が人口が増えも減りもしない置換水準(日本では2.07)まで回復したとしても、そこで人口減少が止まるわけではない。そこから安定人口に収束するまでに時間がかかるからである。

 その収束した人口数を収束前のする前の人口で割ったものが引用部分にもある人口モメンタムである。2004年時点での日本の人口モメンタムは0.89であり、これは今後出生率が2置換水準まで回復、維持されても現在の人口の89%まで縮小されてしまうことを示す。

 著者が少子化についてどう考えているかは、人口学の概念の説明でなかなか見えてこないが、終章を読めば著者が少子化について強い危機感を抱いているのは明らかである。

 ただし具体的な政策の提言などについてはそれほど多くない。それは政治や経済の問題になるのだろう。

 とはいえ、上述したように今すぐ日本の出生率が少し回復したところで、日本の人口が減少することは確実のようだ。フランスが出生率を2.0に回復するには普仏戦争以来100年以上かかったことを思えば今すぐにでも何らかの手を打たなければいけないはずだ。

 人口が減少していくというほとんどどの国家も直面したことのない状況で、経済成長を維持しながら安心して子どもを産み育てていける社会を築いていくかという絶望的な問題を解決しなければならないのは私たちであり、人口問題を考えていく上で必要な知識を与えてくれる点でおすすめの一冊です。
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2007/12/16(日) 21:48:05 | 一語で検索
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