深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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手塚治虫『アドルフに告ぐ』
アドルフに告ぐ 1 新装版 (文春文庫 て 9-1)アドルフに告ぐ 1 新装版 (文春文庫 て 9-1)
(2009/01/09)
手塚 治虫

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おれにも人間の
プライドがある
それを貴様……
ゴミを食わせや
がって!!

虫ケラ
扱い
したな
……


せね
え!!
他のことは
ともかく
これだけは
許せねぇ 

手塚治虫『アドルフに告ぐ 第2巻』


「週間手塚治虫アプリ」がきっかけで、今になって読み直している手塚治虫。アプリ内課金ができるようになって電子データも入手できるようになった。まだ私は本のほうが好きかなと思うけれど、iPad の発表もあって読書のスタイルも変わるのかもしれません。

 それはさておき、この「アドルフに告ぐ」も冒頭を触り読みして、続きが気になっていたもの。1936年のベルリンオリンピックに新聞記者として赴任した峠草平が「狂言回し」として、ヒトラー出生の国家機密をめぐる事件に巻き込まれていく。

 その文書をめぐる各国の動きを軸に戦前の雰囲気を描きながら、ヒトラーと同じアドルフの名を持つドイツ人2人の友情が第二次世界大戦を経て引き裂かれ、数奇な運命をたどっていく姿を描いている。
 ヒトラーユダヤ人説というのは完全に否定されているそうだが、ゾルゲ事件なども取り上げられており、重厚な作品となっている。

 国家権力を相手にほぼ個人で立ち向かうという絶望的な戦いを描いていながら、進行役の峠草平があっけらかんとした性格で恐ろしくタフな人間であり、物語に暗さを感じさせない。

 とはいえ歴史という制約のためか、文書をめぐる事件はあっけなく終息し、物語は成長した二人のアドルフ、カウフマンとカミルを中心にしたものへ移っていく。

 特にドイツ人のエリートでありながら、ユダヤ人へのシンパシーを抱くカウフマン、友人のカミルの父親を銃殺し、ヒトラーの腹心へとなっていく姿が刻々と描かれ、ぞっとさせる。

 終戦間際、二人のアドルフ、そして草平が再会する後半部分は、カウフマンにとってはあまりに皮肉な運命が待っており、読み進めるのもつらくなっていく。

 そして最後には中東戦争にまでつながっていくとは想像できなかった。少し書きすぎかと思うけれど、この展開には脱帽。

 国家、民族、社会といった個人以上の存在が時として、個人にあまりに皮肉な運命を強いる。それを呆然と眺めるしかないところにやりきれなさがある。


 それにしても手塚治虫作品にはレイプシーンが多いと思うのだけれど、当時はそういう決まりでもあったのかと疑いたくなってくる。
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