深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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手塚治虫『奇子』
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こ…わ…い!!

なにも
こわいこと
なんか
ありゃせん
勇気
出せ!

いや!
殺される!

そんなこと
ありゃせん
にいちゃんが
ついてるだ!

いや!
のぼれない!

みんな みんな
奇子を殺しに
くるのよ

奇子
ここが
いいの 

手塚治虫『奇子 下巻』


『MW』『きりひと讃歌』に続き、「手塚治虫アプリ」で触り読みして、面白そうだなと感じた、こちらの作品を読んでみた。

 この作品を読むまでは全く知らなかったのだが、戦後最大の謎といわれる「下山事件」に取材していて、東北のある旧家のどろどろした人間関係が描かれる。
 第二次世界大戦後、GHQの工作員として生き延びた天外仁朗は故郷に帰還する。田舎の名家である天外の家では兄市朗が実権を得ようと、父親に嫁を差し出し奇子という少女までなしており、仁朗を邪魔者扱いする。

 仁朗は指令により国鉄のストを支持する共産主義者の男の死体を鉄道事故に見せかけて処分する。しかし証拠品の処分をしているところを家族に目撃されてしまう。

 父親と兄市朗は天外家の体面を守るため、仁朗を逃がし、目撃者である奇子を地下牢に幽閉し死亡したものとして届け出る……。


 健全、という手塚治虫のイメージはすっかりなくなります。グロテスクでリアリティの薄い、突拍子もない話ながら、ぐいぐいと読ませます。

 起きる事件はリアリティがないといっても、家族の命や物事の是非なんかより、何よりも家の体面を守ろうとする田舎の旧家の姿は恐ろしくリアル。生々しく、ぞっとする。

 何となく、こういう仕組みで回っていたのかな、闇に葬られた事件はあるのかなという気になる、という恐怖心がくすぐられる。

 奇子が成人し、田舎を抜け出すまでは、文句なしに気持ち悪く、おもしろい。

 ただそこから都会でヤクザの頭領となった仁朗と奇子が再開してからというのは、多くの人が指摘するようにチープな感じが強くなってくる。


 とはいえ、これだけ予想の斜め上をいくストーリー展開でうまく構成されているのかもよくわからない作品ながら、これだけ読ませる手塚治虫はやっぱりすごいなと思う。絵の力も大きいのかな。
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