深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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ノーマン・メイラー『タフ・ガイは踊らない』
タフ・ガイは踊らない (ハヤカワ・ノヴェルズ)タフ・ガイは踊らない (ハヤカワ・ノヴェルズ)
(1985/10)
ノーマン・メイラー吉田 誠一

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 だが、夜明けがやってきて、地獄町(ヘル・タウン)の売春婦どもの客引きの声に聞き入らざるをえなくなると――その声はなぜいつも目覚めと眠りの間に最も大きくなるだろうか、まるで目覚めと眠りとが一世紀も隔たっているかのように――わたしは?のガーガーいう甲高い鳴き声にようやく気づいた。夜の幼虫(ラーヴィー)を追い払うような甲高い鳴き声に。ところで、「幼虫」と声に出してみると、ささやかな楽しみが芽生える――そのさなかに、ラテン語の一語がよみがえってきたのだ。汝ラーヴィーよ、汝幽霊どもよ! エクセター校のラテン語も、まんざら捨てたものではない。

ノーマン・メイラー『タフ・ガイは踊らない』


 このブログを始めた頃にメイラーの訃報が流れて試みに記事を書いた。その時に読んでみようかと言いつつずっと積読になっていた本書。

 これもブックオフで入手したもので、よく見かけるので入手は簡単だと思う。映画化されているらしいので、その関係でよく出回ったのかもしれない。

 本書は帯によればメイラーが初めて挑戦したサスペンスタッチの探偵小説。タイトル通り、ハードボイルドぽいところもある。
 作者が住んでいたというアメリカ東海岸ケープ・コッドが舞台。妻に家出されている冴えない小説家ティム・マドンが、泥酔して記憶を失くした翌日、自分のマリファナ畑で金髪女性の首を発見し、自らが殺人を犯していないと確信も得られないまま事件に巻き込まれていくというもの。

「性と暴力」が多いのはメイラーらしいのかもしれないが、昼メロぽいB級臭さがあってあまり期待していなかった。

 しかし自らが殺人犯かどうかもわからないまま恐慌をきたす主人公が情けなくも滑稽で、上に引用したラテン語を使ったりと遊び心のある文章もおもしろく意外と楽しんで読めた。

 特にタイトルにもなっているタフ・ガイであるティムの父親がいわばハード・ボイルド担当で、全てを持っていくほどかっこいい。下手に技巧を尽くさず真正面から事件にぶつかっていく。

 印象に残ったのは、死体の処理を終えた父親が息子にその手順を事細かにおもしろそうに話す場面。その行為には一種の救いがあるというところにはどきりとさせられる。

 盛り上がりはそこがピークで、その後の解決編はややもの足りない。はでなトリックもないし、父親も目立たない。病的なやるせなさが残る。

 とはいえミステリとして読むともう一つかもしれないが、なかなか楽しんで読める一冊だと思う。


 それにしても無法地帯というかなんというか、世界が違いすぎる。
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