深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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『葉隠』
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 一、わが身にかかわる重大事は、不動の決意をもって腹をすえ、まっしぐらに突き進んでやってのけないと、決着のつかないものである。大事の起きたとき、一々、人に相談していては相手にされない場合が多く、人が本当のことを言ってくれないものだ。このようなときにこそ、自分の決断が必要なのである。まず自分を熱しきった状態において、生命を捨てると決心すればそれでよい。こういうときに、うまくやろうと思うと、すぐ迷う心が出てきて、たいてい仕損じてしまうことになる。多くの場合、味方の人が、自分のためを思ってしてくれることがかえって仇となり、贔屓の引き倒しとなってしまうことがある。『葉隠 1』


『死ぬことと見つけたり』の本編はもちろんおもしろかったが、『葉隠』がおもしろてはいけないのか?と問いかける「まえがき」が心に残った。

 それまで『葉隠』にあまりいい印象を持ってなかっただけに気になって、早速読んでみることにした。

 本当は原文が収録されているものがよかったけれど、「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」の一節を読んでも私にとってはかなり難解なので、現代語訳されたこの中公クラシックス版に落ち着いた。
 wikipediaの葉隠の記事を見ると全11巻となっているが、この版では葉隠聞書 一~十と付録という形になっている。また完訳というわけではなく、省略もある模様。その分非常に読みやすい。


 葉隠は鍋島光茂に仕えた佐賀藩士山本常朝が口述した武士の平時の心得を田代陣基が記録したもので、1706年ごろの成立だという。

 山本常朝は光茂に殉死する覚悟を決めたと語りながら、葉隠を残しているのが不思議だったが、それは殉死が禁止されたためだという。


 確かに読み出すと案に相違しておもしろく、読みやすいこともあって、あっという間に読めてしまった。

 ただ実際に武士の心得について語った部分は聞書一、二が中心で、それ以降は佐賀藩を中心にした言行録になる。

 藩主一族の失敗なども収録されていたりしておもしろい部分もあるものの、理解に苦しむものもあって、中だるみ感がある。

『死ぬことと見つけたり』を読んでいると、隆氏はここをモチーフにしているなとわかる部分があって楽しめる。

 またこの点に関しては、中公クラシックス版は見るべきものがあると思われる一節には小見出しとして原文が引用されており、親切なつくりになっている。


 戦場という働き場所を失った武士に対する同情と平和の中で変わっていく武士の姿に対する苛立ちみたいなものが感じられる。

 武士は平時でも死を忘れてはならないとする。葉隠ではいかに腹をくくるか、覚悟を決めるかが語られているといっていいと思う。

 そのためには、常にシミュレーションをしておくことが何より大事なのだ。「覚の士」「不覚の士」という言葉に端的に表れている。

 事に望んであれこれと算段をしているようでは迷いが生じ、行動も遅くなる。特に生死を分かつ場面では、決断はあらかじめ、または即時に下しておいて、あとは夢中に進むしかないのかもしれない。


 印象に残ったところはいくつもあるが、そのうちの一つがこれ。

 一、奉公人は、ただそのお役に打ち込んでいるのが立派だ。そして、大役などを失敗するかも知れぬと思って引退したがるのは敵に後ろをみせることで、卑怯者である。その役を命ぜられて不本意にも失敗するのは、戦場における討死同様と考えるべきだ。(『葉隠 1』


 仮に自分には荷が重過ぎる仕事を任されたとしても、失敗したら討死だと考えて突き進むしかないのかもしれない。しかし、一方では使用者側に任命責任を預け、目の前の仕事に全力を尽くせばよいというのは少し気が楽になる面もあるのではないかと思う。


 腹を据えて突き進めば、死者も生き返るというような部分もあり、精神主義につながりやすい面は確かにあると思う。

 当時の武士の姿を記録した部分を読んでいると、江戸時代になっても喧嘩や日ごろの働きの中で死を仰せ付けられ、死んでいく武士は意外にも多い。

 しかしその殺伐としたイメージの一方で、著者自身、寝るのが好きだと語る一面もあったり、忠言の仕方、家臣を使う藩主としての心得などを語る部分では細やかな神経と優しさが感じられる。

 しかし印象ほど堅苦しい書物ではなく、現代の人が読んでも興味深く読める、魅力のある書物あると思う。サラリーマンに向けて葉隠の特集が組まれるのも頷ける。
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