深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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萩尾望都『ポーの一族』
ポーの一族 (1) (小学館文庫)ポーの一族 (1) (小学館文庫)
(1998/07)
萩尾 望都

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だってー
だって
現実に
恋人はあなたの
そばにいないんだ

目を
さましたら?
あなたは夢を
みてるんだ

みんな
現実に
直面して
なやんだり
憎んだり
悲しんだり
してるんだ
なぜ?

あなただけ
幸せで
いられるはず
ないよ!

はるかな国は
どこにもないよ
そんな国には
人は住めないよ
エルゼリ

萩尾望都『ポーの一族』
「はるかな国の花や小鳥」より


『トーマの心臓』がおもしろかったので、同じく代表作のこちらを読んでみた。
 エドガーとメリーベルの兄妹は森に捨てられていたところをある老女ハンナに引き取られる。しかし彼女は普通の人間ではなく、バンパネラという吸血鬼の一族だった。

 ある日エドガーは、バンパネラと人間の婚約の儀式を目撃してしまう。秘密を知られた一族はメリーベルを人質にエドガーにバンパネラとなることを強要する……。


 本作は少年のまま時を止められ、望まずしてバンパネラとして生きていくことになったエドガーたちの姿を、200年以上にわたるときを複雑に往き来しながら描いたもの。

 やはりこの作品も語り口がすばらしい。「少女の時間をとめました」という歌と、時と場所を越えて現れる同じ少年少女、エドガーという少年の妹への異常な執着。

 実は彼らがバンパネラだという吸血鬼の一族だということ、そして彼らも不死身ではないということがメリーベルの死として衝撃的に明かされていく。

 人間と異端であるバンパネラの二つの種族の対立というかたちになっているけれども、必ずしもバンパネラが被害者として美化されていないところが好きだ。

 自分たちの秘密、種族を守るためには、人も殺すし、感情のままに行動してしまうこともある。

 そういった対立する種族として描かれながら、時に親しく交流し、時には自分にないものを求めて強く憧れる。「グレン・スミスの日記」のようなそういった姿が描かれているものが私は好きだった。

 なかでも好きなのは上に引用した「はるかな国の花や小鳥」。大切な人を失いながら、幸せそうに暮らしている人間を見て、その理由を問いたださずにはいられないエドガーの姿。

 しかし悲しみは決して癒えたわけではなかった。その悲しみを背負いながら、永遠の時を生きていかなければいけないエドガーが涙を流す姿は痛切に悲しい。

 絵柄は古いけれども、ピーターパンを思わせるような神隠し的な要素やマザー・グースの多様といった西洋の伝承を散りばめた雰囲気に合っていてとてもよかった。


 そういえば、何故ポーの名前になっているのかはあまりわからなかった。私自身もポーは結構好きな作家だけれど、読んでない作品に何か関係があるのかなあ。
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