深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
萩尾望都『トーマの心臓』
トーマの心臓 (小学館文庫)トーマの心臓 (小学館文庫)
(1995/08)
萩尾 望都

商品詳細を見る

ぼくがいると
じゃまだよ

なんの?
じゃま?

マリエを
忘れるのに
あなた また
きっと
だれかを
好きになる
でしょ
あなた
人間だし

その時は
その時
浮気したら
きみに頭をさげて
許してもらうさ

ブラウン氏が
きみを引き取るという
わたしはいやだ
きみまで失うのは

萩尾望都『トーマの心臓』


 どこで読んだか忘れてしまったけれど、男でも読める少女漫画では必ず挙げられるのが萩尾望都さんらしい。

 萩尾さんの作品は、印象的なタイトルからあちこちでパロディされている『11人いる!』を以前読んだことがある。緊張感があっておもしろく、何よりフロルというキャラが魅力的だった。

 それっきりになっていたけれど、そこまで幅広い読者層を獲得していると聞き興味をそそられ、改めて代表作といわれる本作を読んでみることにした。
 あるギムナジウムで美しい少年が事故死する。しかし彼トーマの遺書を受け取ったユリスモールは、トーマが自分のために自殺したことを知る。トーマとその友達はユリスモールを口説こうと競争し、激しく拒絶された関係だった。

 トーマの影を追い払うことのできないユリスモールの前に、そのトーマそっくりの少年エーリクが現れる。彼が転校生だとわかりギムナジウムは大騒ぎになる……。

 これは読み出したら止まらないおもしろいで、450ページ強と結構な分量ながら、あっという間に読んでしまった。

 トーマの謎めいた遺書と「心臓」という生々しくどぎつい言葉。厳格な規律が支配するギムナジウムという閉鎖空間を舞台に繰り広げられる少年たちの愛憎関係。

 いけないものを見ているような背徳感を覚えながら、少年たちにどんなどろどろとした関係があったのか、またどんな悲惨な結末を迎えるのか、先が気になってしょうがなかった。

 気性が荒いけれども純粋でまっすぐにぶつかっていくエーリクや、一つ年上で大人びて達観したようなところがありながら問題を避けているようなところのあるオスカー。

 彼らにも家族や友人たちをめぐってストーリーが用意されている。それがキャラクターに肉付けを与え、主人公以上に魅力的な人物になっていたりと、実に内容が濃い。

 特にエーリクの自我の揺れ動く姿や毛嫌いしていた母親の恋人と和解する場面はとても印象に残った。


 よくよく考えれば、トーマの自殺という設定や心臓というどきっとさせる言葉を使ったミスリーディングはあざとい気もする。

 けれどもそんなことはどうでもいいぐらい巧みな語り口に、素直にまいってしまった。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://deepseafishtank.blog123.fc2.com/tb.php/189-155137f0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。