深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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一川誠『大人の時間なぜ短いのか』
大人の時間はなぜ短いのか (集英社新書 460G) (集英社新書)大人の時間はなぜ短いのか (集英社新書 460G) (集英社新書)
(2008/09/17)
一川 誠

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 身体は、常に時間と空間の中に位置づけられている。寝転がって、目を閉じ、耳をふさぐと、身体を通しての空間的拡がりはほとんど感じられないかもしれない。しかし、時間の経過が存在しない心の状態を想像することは可能だろうか。
 普段よりも時間の進行が早くなったり、遅くなったりすると感じることはあるかもしれないが、時間が進まないという体験をしたことがある読者は、ほとんどいないだろう。時間の速さが気になるということは、そもそも進行が意識されているということにほかならない。
 眠っているときには、時間の進行を体験しないかもしれない。しかし、人間に意識があって、考えたり感じたりしているとき、つまり心が何らかの動きを示すとき、そこには必ず何らかの形で時間が関わっている。
 つまり、意識が何らかの変化を含む場合、時間から逃れることはできない。時間は、私たちの体験の基礎にあるといえるのだ。

一川誠『大人の時間はなぜ短いか』


 時間については以前中島義道さんの「時間」を哲学するを読んだけれど、心理学者が時間に挑んだ本が新書で出たということで手にとってみました。

 私自身も誕生日や季節の変わり目などに「もう1年経つのか」と感じることが多い。本書はタイトルどおり、大人になると時間を短く感じる場面が増えてくるのは、何故かという問題に心理学的にアプローチしたもの。

 時間だけを扱った本であるかのように見えるけれども、物理的な世界と心的体験のずれることが往々にしてあるということを様々な実験結果から説明し、人間の認知的特性を解説している。
 特に、錯視の説明にかなりの分量が割かれていて、知覚心理学の入門書としても手頃なのではないかと思う。タイトルは目を惹くかもしれないが、その辺りが隠れてしまっているのはもったいない気もする。

 本題の心理的な時間のずれに関しては確定的な要因はわかっていないながらも、代謝などの生理的要因や注意、発達といった様々な面から検討された実証研究が示されていて興味深い。

 最終章では均一化する現代社会の時間に対して警鐘を鳴らし、機械的な時間と心理的な時間のバランスをとることが大切なのではないかという一歩踏み込んだ議論もなされている。

 時々、研究の意味を語り出したりと興味深く、著者はまじめな人なんだろうなと思わせる。その点は、心理学が誤解されていることが多いから啓蒙したくなるんだろうかと、穿ちすぎた見方もしてしまう。


 中島氏には評判の悪かった心理学的時間論だけれど、終わりとして「死」を据え、一期一会的な時間における「今」の特性、大切さを説くところなんかは似ていかもなと思っておもしろかった。
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