深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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内田樹、春日武彦『健全な肉体に狂気は宿る』
健全な肉体に狂気は宿る―生きづらさの正体 (角川Oneテーマ21)健全な肉体に狂気は宿る―生きづらさの正体 (角川Oneテーマ21)
(2005/08)
内田 樹春日 武彦

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 未来に向かって開かれているというのは、未来の可能性を列挙して安心したり不安がったりするということではなくて、一瞬後には何が起こるかわからないという覚悟を持つことだと思うんです。ですから、「取り越し苦労をするな」というのは、楽観的になりなさい。ということでは全然なくて、「何か起こるかわからない」のだから、全方位的にリラックスして構えていないと対応できないと、いうことなんですね。

内田樹、春日武彦『健全な肉体に狂気は宿る』


 内田氏のネットでの若い世代向けの発言はちょっと説教じみていて、私にとっては辟易してしまうところが少なくない。

 ただこの本は「生きづらさの正体」という副題がついていて惹きつけられるところがあり、対談ということで読みやすいそうなので手にとってみた。

 本書はフランス文学者の内田氏と精神科医の春日氏が「カンヅメにされて」一気に行われた対談が収録されている。
 冒頭の「ひきこもり」が個人が置かれている状況を無視して問題を直視するのを避ける便利な言葉として使われているというのは考えさせられる指摘。

 また基本的に変化を嫌うとか、一度決めた未来に縛られるというのはわかる気がする。私自身も案に相違してうまく行きすぎると不安になったりするものだ。

 しかしこの本を読んでも問題は解決しない。それは結局は個人個人で対処するしかないと突き放される。一章の最後で「途方に暮れる」ような本にしたいというのは成功している気がする。

 著者らは精神の健康に必要なこととして、「物事を保留しておく能力」「中腰の姿勢に耐えられる余裕」を挙げているけれど、ひきこもりや自己探しだって一種のペンディングのような気がしないでもない。それがデッドエンドの危険性を多分にはらむとしても、そう目くじらを立てなくてもいいではないかと思う。これは私の願望か……。


 それにしても内田氏というのは力がありあまっているというか、よほど話好きなのだろう。対談のほとんどが内田氏の発言になっている。

 編集者が春日氏に水を向けたと思われる質問も、それを引き取って内田氏が話し出す場面もあり苦笑してしまう。

 そして後半になると、放談といった感じで少し散漫な印象を受けた。しかし序盤のほうだけでも読んでみる価値はあったかもしれない。



 余談だけれど、本書でも紹介されていたビル・マーレイの「恋のデジャ・ヴ」がタイムリーにも深夜テレビで放送されていたので見てしまった。タイトルだけでは一生出会わなかっただろう作品を見る機会ができたのよかった。

 これは同じ日を繰り返し生きることになった気象予報士の男を描いたもの。最初はお金を盗んだり悪事をはたらくものの、ヒロインを口説いても振られ続け、自殺しても次の日にはリスタート。

 そんな悪夢のような生活を繰り返す中、ヒロインの女性に影響を受け、他人を助け自分を磨きをかけるようにしたところ、ヒロインにも惚れられるようないい男になり再び時間が動き出すというもの。

 ストーリーはテンプレ的なものだけれど、同じ時間でも使い方が違えばこれだけ違うんだというところだろうか。

 成功し出すところももちろんいいけれど、男がやはり自暴自棄になっていくところがリアルでよかった。動物に車を運転させての警察とのカー・チェイスはシュールで笑ってしまう。

「人間の善性は時間の函数」という内田氏の発言もおもしろい。「取り返しがつかない」とか「もう後がない」とか、そういった思いが人をだめにするのかなと思う。
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