深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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神野直彦『財政のしくみがわかる本』
財政のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)財政のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)
(2007/06)
神野 直彦

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 一九二〇年代も八〇年代も、日本の政府は「民主主義はどうなるのか」ということは考えませんでした。最近では「地方債にしても市場の統制が重要なのだ。市場に統制してもらったほうがいい」と、ものごとの原点をとりちがえています。民主主義が崩れてしまうことが目に見えているのです。
 市場では、人びとは購買力に応じて発言力をもっているので、金持ちの言いなりになることになるからです。「それは民主主義ではない」と言わなくてはいけないのに、マスコミも国民もいっせいに、「市場の声に逆らわないことがいいことだ」と言っていることに、私は民主主義の危機を感じています。

神野直彦『財政のしくみがわかる本』


 2011年までにプライマリーバランスの黒字化を達成するという目標も事実上断念ということで、日本の財政はどうなってしまうの? ということで手にとってみた。

 本書は国の財政、地方の財政、家計はそれぞれどう違うのか、財政の歴史的な意味、税金の使い道、現在の日本財政の問題点などに触れながら財政や税のしくみをやさしく解説した一冊。

 しかしその一方で著者の考えがストレートに出てくる。市場に任せてよい部分と政治によって分配を行う部分をきっちり分けるバランスを重視する立場に立つ。

 当然、市場原理にその分配を委ねようとする新自由主義的な政策には批判的で、特に小泉政治には手厳しい。その面で合わない人はいるかもしれない。
 著者によれば日本の財政が抱える一番の問題は財政赤字ではないという。紙幣を印刷してインフレを起こせば借金は消えてしまう。

 一番の問題は財政が有効に機能せず、社会的・経済的な危機に対応できないことだという。産業構造の変化によって格差社会が進行する中、財政の所得再分配が機能していない。

 それどころか消費税の増税が叫ばれ、貧しい人への負担を増やす方向に動いている。しかも助け合いや未来の格差を減らす教育をするのではなく、個人の力で生きろとするアメリカ型を志向するというちぐはぐな政策になっている。

 もう一つは国から降って来る仕事が多く、地方の財政を圧迫し、自由を奪っている面があり、住民のニーズにきめ細かな対応ができていない面にも著者は警鐘を鳴らしている。

 企業が共同体としての機能を果たせなくなるなかで、政治がその問題に対応できなかったことに問題があったんだろうなという気がする。


 それにしても郵便貯金がイギリスで生まれた経緯の話は興味深かった。一部のお金持ちに政治が左右されないよう、国民全員に国債を持ってもらうというのがその主旨だったという。上限が決められているのもそのためだ。

 しかし日本では競合する銀行界からの要請を呑む形で金利引下げや民営化が行われてしまったと著者は指摘する。

 どうして郵政民営化が議論されているときに、こういったおもしろい話が出てこなかったのだろう。民営化の是非を判断する能力は私にはないが、その点は不思議でしょうがない。
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