深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ランス・アームストロング『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』
ただマイヨ・ジョーヌのためでなくただマイヨ・ジョーヌのためでなく
(2000/08)
ランス アームストロング

商品詳細を見る

「人間」の定義の一つはこうだ。「人間のもつ、神や動物や機械とは違う特徴は、弱さの影響を受けやすいことで、これこそが人間の特質である」。運動選手は、あまりこのようには考えない。競技者は無敵のオーラを求めるのに忙しすぎて、恐怖や弱さ、無力、もろさ、誤りやすいといったことは認めたがらず、同じ理由から、彼らは自分にまたまわりの対しても人間に対しても、それほど親切でも思いやり深くも慈悲深くも優しくも寛大でもない。しかしあの日の夜、家で一人で座っていると、おびえるのは謙虚なことであり、それ以上に人間らしいと思えた。

ランス・アームストロング『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』


 Amazon などで自転車の本を検索していると、嫌でもまっ黄色な表紙と、マイヨ・ジョーヌという耳慣れない言葉のこの本が目に留まる。

 調べてみるとマイヨ・ジョーヌとはロードレースの最高峰ツール・ド・フランスで総合成績が1位の選手に贈られる「黄色いジャージ」のことだという。

 著者のアームストロングは、睾丸癌が見つかり生存率5割以下といわれながら、癌を克服しこの過酷なレースで七連覇という偉業を達成した人物だという。

 本書は癌克服から初めてツール・ド・フランスを制覇した時期に書かれた著者自身の半生を綴った自叙伝。
 原題は「自転車についての話じゃない」ということで、自転車だけでなく癌との闘いや私生活についても多くのページが割かれている。

 自身を成長させてくれた癌を「人生最良のこと」と呼ぶ彼の考え方や行動は下手な自己啓発書より勇気づけられる。アメリカの良質な部分が感じられるようなサクセス・ストーリー。

 耐えることなら向いていたと語るとおり、癌について徹底的に調べ、つらい治療にも完全と立ち向かっていく姿は参考になる。

 もう一つ彼のすごいところは、引用したところにもあるように、自らの弱さや恐怖心を素直に認め、赤裸々に吐露しているところ。

 運転免許もなしに車を乗り回したり、黄色信号では停まらないといって事故ったり、うまくいかないことを友人に当たり散らしたり――激しい気性のアームストロングと、生で接するのはきっと大変だと思う。

 そういった面が見えるとしても、彼が語る彼自身はとても力強く、自信に満ちている。そこにはやはり強い人だなと感嘆させられる。

 そして何より自転車についての描写が好きだ。初めて自転車に乗った時の自由の感覚、風の心地よさ、上り坂のつらさ。そういった感覚の一つひとつがよく伝わってくる。

 癌を克服した後も精神的に落ち込み、自転車が嫌になり、自分を見失っていたアームストロング。

 そんな彼が自転車で山を上りながら「僕の人生は長くつらい上り坂を上るためにある」と再びアイデンティティを獲得していく姿は静謐さと昂揚感に満ちていて、神聖ささえ感じるような美しいシーンだった。


 日本ではロードレースはマイナーでほとんど見聞きすることはなかったけれど、この本を読んで興味をそそられた。

 最近文庫版(ただマイヨ・ジョーヌのためでなく (講談社文庫 あ 105-1))が出たようなので、自転車に少しでも関心のある方にはおすすめです。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://deepseafishtank.blog123.fc2.com/tb.php/157-f2b05254
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。