深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet
(2007/03)
桜庭 一樹

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 あたしは両手で顔を覆ったまま、洗濯機に頭を突っ込んで、声を殺して泣いた。藻屑。藻屑。もうずっと、藻屑は砂糖菓子の弾丸を、あたしは実弾を、心許ない、威力の少ない銃に詰めてぼこぼこと撃ち続けているけれど、まったくなんにも倒せそうにない。
 子供はみんな兵士で、この世は生き残りゲームで。そして。
 藻屑はどうなってしまうんだろう……? 

桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』


 桜庭一樹さんが「私の男」で直木賞を受賞したと聞いたときは少し驚いた。やはりライトノベル作家のイメージが強かったから。

 桜庭一樹の名前を初めて知ったのがこの『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』だった。救いのないストーリーだが傑作だという評判をぽつぽつと見かけた。

 だから彼女の作品を読むときは、インパクトのあるタイトルが強く印象に残っているこの作品からにしようと思っていたのだった。
 舞台は鳥取県の港町。母子家庭でひきこもりの兄を持つ中学2年生の山田なぎさは生きる力「実弾」を求めていた。なぎさの前に、地元出身の歌手を父に持つ海野藻屑が転校してくる。

 その黒髪の美少女は自らを人魚だと名乗る。クラスメートに転ばされた藻屑の体にたくさんの痣を見つけたなぎさは意に反し藻屑につきまとわれることになる……。

 空想的な発言を繰り返し現実と戦うことを砂糖菓子の弾丸を撃ちまくると喩えたのはうまいなあと思う。陰惨なストーリーなのに、どこか甘ったるく幻想的な雰囲気を感じさせる。

 富士見ミステリー文庫から出ていたわりにはミステリーの要素はそれほど感じさせない。しかし、藻屑の発言の背景を明らかにし、次第に現実に引き戻していく語りがうまく、見事にだまされた。

 気味の悪い不思議少女だった藻屑が、必死に戦っている普通の中学生の女の子になっていくのを見るのは悲しく、どうにもやるせなかった。

 あまり現実感のない登場人物たち。冒頭の新聞記事すら夢のような出来事を予感させる。しかし作者はこれが現実なのだと突きつけてくる。

 生き残りゲームという現実の中で子どもたちは戦っている。かなりの衝撃を受けた一冊。
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