深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』
ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)
(1977/04)
スタニスワフ・レム

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「それはきっと夢なんだよ」私は仕方なしに聞くのをあきらめて、ほっと溜息をついた。「さあ、電気を消して寝よう。朝までもう何も思い悩むことはない。朝になって、気が向いたら、何か別の新しいことを考えよう。いいだろう?」
 ハリーは、スイッチに手を伸ばした。部屋の中が暗くなった。私は冷えてしまったベッドに身を横たえた。しだいに近づいてくるハリーの息づかいが暖かく感じられた。私はハリーを抱き寄せた。
「もっと強く」ハリーがささやいた。そして永い沈黙のあとで言った。「クリス!」
「なに?」
「あなたを愛しているわ」
 私を声を限りに叫び出したい気分だった。

スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』


 少しずつSFにも手をつけていきたいなということで、言わずと知れたレムの傑作SFを読んでみた。

 最近ポーランド語からの新訳が出たようだけれど、安きに流れて旧訳で。正確さの判断はできないが、この旧訳は読みやすく十分に楽しめる。

 海に覆われた惑星ソラリス。主人公ケルビンは宇宙船プロメテウス号からソラリス・ステーションへと飛び立つ。しかし、ステーション同僚は彼の前に現れようとしない。いぶかしむ彼の前に死んだはずの恋人ハリーが現れる……。
 訳者あとがきで引用されているように、レム自身がはっきりと物語の主題を語っている。異星人との接触が征服するかされるか、はたまた平和的関係を築くかという単純な図式にはならないだろう、という問題提起はなるほどと思う。

 自らの最も隠しておきたい過去が形をとって目の前に現れ、他人の前にもさらけ出されるというのは考えただけでも耐えられない。

 そんな中で飛び出してくる「われわれは本当は接触(コンタクト)なんて必要としていないんだ」というスナウトの叫びは、胸に手を当てて考えさせられる迫力を持っている。

 自らの存在に疑問を持っていくハリーの姿や極限状況の中でそんな彼女との関係を求めていくケルビンの姿もぞっとするほど怖いのに、とても切ない。
コメント
この記事へのコメント
こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
2012/01/14(土) 02:16:01 | URL | 藍色 #-[ 編集]
Re:
こんにちは。返信が遅くなってしまい申し訳ありません。
トラックバック送ってみました。
よろしくお願いします。
2012/01/22(日) 23:51:38 | URL | raidou #-[ 編集]
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2012/01/14(土) 01:56:36 | 粋な提案
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