深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女よ』
夜は短し歩けよ乙女夜は短し歩けよ乙女
(2006/11/29)
森見 登美彦

商品詳細を見る

 それを見た私の驚きをご推察頂きたい。
 私はその絵本を奪い取り、舐めるように見た。そして樋口氏から、彼女がその絵本を追い求めて古本市をさまよっていたことを聞いた切な、「千載一遇の好機がついに訪れた」と直感した。今ここに一発逆転の希望を得て、ついにふたたび起動する私のロマンチック・エンジン。
 彼女と同じ一冊に手を伸ばそうなどという幼稚な企みは、今となってはちゃんちゃらおかしい。そんなバタフライ効果なみに迂遠な恋愛プロジェクトは、そのへんの恋する中学生にくれてやろう。男はあくまで直球勝負だと私は断じた。
 彼女が幼き日、まだあどけない顔をして、無心にその名を書き入れた絵本そのものが目前にある。懐かしさのあまり彼女を悶絶させるこの絵本こそ、天下唯一の至宝であり、かつ私の未来を切り開く天与の一冊となるだろう。これを入手するということは、もはや彼女の乙女心を我が手に握ることに等しく、つまりそれは薔薇色のキャンパスライフをこの手に握ることに等しく、さらにそれは万人の羨む栄光の未来を約束されることに等しい。
 諸君、異論があるか。あればことごとく却下だ。
 私は勝利を求めて咆哮した。

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』


 昨年の本屋大賞で2位になったということで、ネットでもよく話題になっているのを見かけた本書。ふと目に留まった装丁に惹かれて読んでみることにした。

 本書は京都を舞台に、黒髪の乙女と彼女に恋する大学の先輩の二人を語り手に据え、多くのエキセントリックな人物をまじえながら描いた連作短編恋物語。

 舞台は現代の京都のようだが、大正浪漫を思わせるレトロな文体で、好みがはっきりとわかれそうな独特のものになっている。
 不思議な出来事が特に説明もなく出てくるファンタジックな作品で、何となく「千と千尋の神隠し」を思い出した。

 あまりにかわいらしい物語なので一瞬作者は女性かもと思ってしまった。wikipedia の著者の項によると女子大付属出身とありやっぱりと思ったのだが、実際のところは名前どおり男性らしい。

 現実離れした人物ばかりが登場する中で、女性に対しておくてでストーカーと言われても仕方のない行動をとる先輩は妙にリアルで共感してしまうところは、やはり女性らしくはないのかなという気にもなる。

 個人的におもしろかったのは何といっても第二章の「深海魚たち」で、古本市が舞台というだけで懐かしい気分になる。作者も本が好きなんだろうなという部分がにじみでていて、好感を持った。

 好きか嫌いかと問われれば好きだと素直に答えることができるが、おもしろいかと問われるとちょっと首を傾げたくなる。とはいうものの、やはり不思議な魅力を持っている作品だと思う。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://deepseafishtank.blog123.fc2.com/tb.php/144-930ecacd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。