深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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須賀しのぶ『流血女神伝 喪の女王』
流血女神伝喪の女王 8 (8) (コバルト文庫 す 5-63)流血女神伝喪の女王 8 (8) (コバルト文庫 す 5-63)
(2007/11/01)
須賀 しのぶ

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 運命の具現であるリシクは、突如、人の前に現れる。
 そして否応なく、真実を突きつける。その過酷さゆえに不吉とされたが、それは信託を受け取る人間があまりに弱いからだ。
 リシクは、いつも迷わない。常に真実の中にいる。
 タイアスのように苦しみもがき、愛情の鎖をひきずるのではなく、ただ一心に女神を愛し、女神のために生きる。
 女神がどれほど苦しみ、傷つき、変容を遂げようと、そして女神ゆえに自身の翼がもがれ、血を流し続けようと、リシクは翔ぶことをやめない。
 それは、愚かしさではなく、強靭な魂ゆえになせるわざだ。
 だとしたらやはり、全ては女神の思惑通りなのかもしれない。
 タイアスとオルは去り、リシクは残る。全ての出逢いも、別れも、これからも変わらず女神が望んだ通りに動くのかもしれない。
 しかしエディアルドを見ていると、それもまた悪くはないと思えるのが不思議であった。
 彼はきっと、リシクという役割を与えられているだけだと聞いたところで、だから何だと答えるだけだろう。いささかも動揺することなく、おのれの意志のままに行動することだろう。

須賀しのぶ『流血女神伝 喪の女王1』


 最終巻を読み終え、抜けるような青い表紙を見ていると、いろいろな感情が込み上げてきた。3ヶ月に渡って読み続けてきたシリーズもとうとう完結。

「暗き神の鎖」編に続き、流血女神伝シリーズの最後を務める「喪の女王」編全8巻読了。眠る前に少しずつ読んできたが、最後の二巻はとまらずに一気に読んでしまった。

 腹に1000番目のクナムを宿したカリエ、そして怪我から回復したばかりのエドはイーダルの保護を得てユリ・スカナに向かう。平凡に暮らそうと決意するカリエだったが、執拗にその命を狙うバルアン、その力を利用しようとするユリ・スカナの王女ネフィシカなど大国同士の抗争に巻き込まれていく……。

 今回は歴史にそれほど強くない私にも明らかに帝政ロシアがモデルとわかるユリ・スカナ王国が舞台。そしてタイトルの「喪の女王」はエカテリーナ2世を思わせるバンディーカ女王からとられている。
 前半で物語から退場するバンディーカ女王だが、タイトルになっているだけあってその存在感がすごい。やり手の女王が過去の思い出にひたり耄碌していく姿が痛々しい。

 女王が登場する前半は描写も緻密で、登場キャラの神秘的な体験なども美しく、シリーズ中でも白眉の出来だと思う。

 中盤にかけていくらか中だるみした感がなくはないけれども、ルトヴィア帝国の崩壊に向かっていく終盤では、そぎ落とした文章で淡々と各人物に決着をつけていくのは圧巻だった。

 西欧史をベースにしながら、神の時代から人の時代へ至る過程を描くという困難なテーマを扱いながら、これだけおもしろい群像劇を完走しえたことに拍手を送りたい。

 人の都合で、神は変わる。神が自分の都合で人のさだめを弄ぶのと、なんら変わりはないとバルアンは思う。

須賀しのぶ『流血女神伝 喪の女王8』


 神に翻弄される者、神を利用しつくそうとする者、自ら神に捉われる者、神のことなど意に介さないもの。人が生きる場所、時によって変わっていくのと同様に、人と神の関係も変わる。

 そしてその基本的な流れになっているのは、自由を求める人間の心なのかなと思う。

「少女小説でやりたいことを全て詰め込んだ」と自ら語るだけあって、メッセージ性も強く出ている。そういった意味では、様々なタブーを描き、「少女小説らしくない」と言われながらも、やはり少女小説なのだと思う。

 もちろん苦手に思う部分がないわけではない。個人的には、登場人物の心理の説明や行く末を暗示する文章をべたに書きすぎなのではないかと思うところがしばしばあった。

 それでも、特に「女神の花嫁」編以降をもう一度ゆっくり読み直してみたいなと素直に思った。
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