深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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小林秀雄『Xへの手紙・私小説論』
Xへの手紙・私小説論 (新潮文庫)Xへの手紙・私小説論 (新潮文庫)
(1962/04)
小林 秀雄

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 社会的伝統というものは奇怪なものだ、これがないところに文学的リアリティというものもまた考えられないとは一層奇怪なことである。伝統主義がいいか悪いか問題ではない、伝統というものが、実際に僕等に働いている力の分析が、僕等の能力を超えている事が、言いたいのだ。作家が扱う題材が、社会的伝統のうちに生きているものなら、作家がこれに手を加えなくても、読者の心にある共感を齎す。そういう題材そのものの持っている魅力の上に、作者は一体どれだけの魅力を、新しい見方により考え方によって附加し得るか。これは僕は以前から疑わしく思っていた事である。題材でなくてもよい。ただ一つの単語でもよい。言葉にも物質の様にさまざまな比重があるので、言葉は社会化し歴史化するに準じて、言わばその比重を増すのである。どの様に巧みに発明された新語も、長い間人間の脂や汗や血や肉が染みこんで生きつづけている言葉の魅力には及ばない。どんな大詩人でも比重の少い言葉をあつめて、人を魅惑する事は出来ない。小は単語から大は一般言語に至るまで、その伝統が急速に破れていく今日、新しい作家達は何によって新しい文学的リアリティを獲得しようとしているのか。

小林秀雄「私小説論」


 長いこと小林秀雄を読まず嫌いしていた。小林秀雄の批評はわかりにくいという評判を聞いていたから。

 ところがタイトルに惹かれふと手にとった「考えるヒント」が思ったよりも読みやすかった。そして続けて読んだ「考えるヒント2」がすごかった。その時期少し落ち込んでいた私は、励まされる思いだった。

 それ以来、少しずつ紐解いている。小林秀雄の紡ぐ言葉はやはりかっこいい。私にとっては「わかりにくい」というのは確かで、内容は頭に入ってないのだけれど……。

 この新潮文庫の一冊には、「様々なる意匠」や「私小説論」といった批評の他に、断片的な創作も収録されていて意外だった。ストーリーはほとんどなくよくわからないが、強烈なイメージを伝えてくる。
 個人的におもしろかったのは文字通り文学に挑む新人にメッセージを送った「新人Xへ」やフランスの自然主義文学に触れながら日本の私小説について述べた「私小説論」。

 一応収録作品を挙げておくと次の通り。

「一つの脳髄」「女とポンキン」「からくり」「眠れぬ夜」「おふえりや遺文」「Xへの手紙」「夏よ去れ」「秋」「様々なる意匠」「私小説論」「新人Xへ」「現代作家と文体」「オリムピア」「マキアヴェリについて」「匹夫不可奪志」「『ガリア戦記』」「表現について」「中庸」「政治と文学」「『ペスト』」「喋ることと書くこと」「感想」。
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