深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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須賀しのぶ『流血女神伝 女神の花嫁』
女神の花嫁〈前編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)女神の花嫁〈前編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)
(2003/04)
須賀 しのぶ

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『邪神の子! 呪われよ!』
 そんなふうに言わないで。あなたたちは、僕からお父さんとお母さんをあんなひどい形で奪ったのに、よくそんなことが言えるね。あなたたちこそ、邪神のしもべじゃないか。あんな恐ろしいことが平気でできるなんて。
『死んでしまえ! おまえはこの世に災いをもたらす存在だ!』
 誰が死ぬもんか。思い通りになってやるもんか。災いをもたらす? それはあんたたちだろう。
『タイアスはおまえの存在を許さない! おまえは無惨に滅びる運命なのだ!』
 ゆるされなくとも存在している。ならば僕の神はタイアスではないのだろう。無惨にほろびるのは、おまえらだ。そうだ、僕はおまえらを滅ぼすために、邪神の力を手に入れよう!
 ただ復讐のために。おまえたちを一人残らず滅ぼすために。おまえたちが父さんと母さんにしたように、最も惨い形で殺してやろう!

『流血女神伝 女神の花嫁 中編』


「流血女神伝 女神の花嫁」全3冊読了。「天気晴朗なれど浪高し」に続いて流血女神伝シリーズ4作目。

 本作も本編から離れ、外伝という位置づけになっているが、著者自ら語るように番外編だった「天気」よりも本編と密接なつながりをもっている。

 本来はカリエと同じく主人公となる予定だったラクリゼの過去が描かれる。かつて流血女神を助けた者を始祖とするザカール族は外部との接触を絶ち、その特別な力で恐れられている。

 その長老クナムは、外部から女神の娘と呼ばれる伴侶を探し当てる風習で。女神の娘が生んだ男児が次のクナムに就く。そしてこれが1000代続いたとき、女神が復活を果たし、その子は世界を支配するとされる。ところが999番目のクナムとして生まれたラクリゼは女だった。

 男として育てられた彼女は誰よりもクナムらしく振る舞おうとする。そんな時、かつて村を駆け落ちした者の息子サルベーンが現れる。秘密を抱え孤独を深めるラクリゼは同じ異端者としてサルベーンに惹かれていく。二人は村を脱け出しホルセーゼの傭兵部隊を目指すことになるが……。
 このラクリゼ編のテーマは「愛」ということになるだろう。カリエの父母の登場するヨギナ攻防戦描くものと思っていたが、ラクリゼとサルベーンを中心にしたラブ・ストーリーだった。

 ラクリゼはカリエと違い口数が少なく、会話が少ないこともあり、かなり字が詰まっている。そして内容も全体的に重く、甘い部分はあっという間に過ぎ去り、過酷な展開が待ち受けている。

 そういった意味でライトノベルにしては読みにくいかもしれないが、一つのテーマを追求した濃密なストーリーでとてもおもしろかった。

 ここにはさまざまな形の愛が描かれる。互いを激しく求める愛、何かをしてあげたいと思う愛、母親としての愛、遠くから見守る愛。

 その形は一つではなく、またどれだけプラグマティックなものだとしても、人は愚直に愛を求め続けている。その姿が強く印象に残った。

 特にアデルカの死の部分が好きだ。アデルカがラクリゼの代わりに死ぬことは読者にわかっている。それは劇的なシーンを予感させるが、彼の死は激戦の最中ラクリゼに知られることなく淡々と起こる。そこが意外であったけれど、最期に女神を見て、愛する者のために死んでいく姿に好感が持てる描き方だった。

 そのほかにはラクリゼの幼少時代のザカールの村もいい。その厳しい掟に歪められていく少年少女には深く共感することができる。他の国から隔絶され独自の規範で動く世界でありながら、生々しさがあると思う。


 次のザカール編からはいよいよ本編に戻るというので期待大。
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