深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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スティーブン・ピンカー『人間の本性を考える』
人間の本性を考える  ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)
(2004/08/31)
スティーブン・ピンカー

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 還元主義には、コレステロールと同じように、いいものと悪いものがある。悪い還元主義(「貪欲な還元主義」あるいは「破壊的な還元主義」とも呼ばれる)は、ある現象を最小の要素やもっとも単純な要素で説明しようとする試みである。貪欲な還元主義は、架空の議論ではない。神経細胞膜の生物物理やシナプスの分子構造を研究することによって、教育や紛争解決やその他の社会問題にブレイクスルー[突破口]をもたらせると信じている(少なくとも補助金をだす政府機関に対してそう言っている)科学者を、私は数人知っている。しかし貪欲な還元主義は、けっして多数派の見解ではないし、なぜまちがっているかを簡単に示せる。哲学者のヒラリー・パトナムが指摘したように、丸い穴に四角い栓ははめ込めないという単純な事実でも、分子や原子という立場からは説明できず、堅さ(栓を堅くしているのがなんであるかに関係なく)や外形といった上位レベルの分析によってしか説明できない。それに社会学や文学や歴史学が生物学で置き換えられると本当に思っているなら、なぜそこでやめてしまうのだろうか? 生物学を化学に、化学を物理学に分解できたとして、第一次世界大戦の原因を電子やクォークの立場から説明しようとしたとする。たとえ第一次世界大戦が、途方もなく複雑なパターンで動く途方もない数のクォークでできていたとしても、そういう記述の方法からはどんな洞察も得られない。

スティーブン・ピンカー『人間の本性を考える 上』


 NHKブックスでその著作が何冊も翻訳されているスティーブン・ピンカー。前から読みたいと思っていて、ようやく手にとってみた。

 本書は人間が「空白の石版」で生まれ、その後の体験によってどのようにも染まりうるといった考えを徹底的に批判し、人間が持って生まれる本性の存在を示そうとしたもの。

 その背景には、文化の存在や教育を重視するあまり、本来変えようもない問題に対しても改善できるという理想を抱いて突き進むことは危険であり、現実を正しく認識することが重要なのだという問題意識がある。
 しかしその問題意識には共感できたものの、正直あまり楽しむことができなかった。

 やはり私は否定的に描かれているスキナーが好きだし、どちらかというと経験重視の立場に近いから、あまり冷静に読めなかったのだろう。

 冒頭に紹介されている彼の同僚たちの反応のように、著者のいう極端な「空白の石版」説を掲げる人がどれだけいるかも疑問に思ってしまう。

 そして本性の存在が興味深いエピソードが語られるわけでもなく、「空白の石版」説を否定し続ける上巻でげんなりしてしまった。

 とはいえ中巻に描かれる遺伝的なものの存在に対する無知と恐怖が、「決定論」「還元主義」というよくわからない批判を生む理由を考察して反論していく部分はおもしろかった。

 そういった恐怖は私自身にもあるし、人間の行動の研究にはついてまわるのだろう。だからその部分に関する誤解を丁寧に解こうとする姿勢がとてもよかった。

 私にとっては上巻が少し長すぎたかもしれない。
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