深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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須賀しのぶ『天気晴朗なれど浪高し。』
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「そんなはずねえだろ、あんたは、名門ギアス家のおぼっちゃまだろうが。頭もいいし、洋々たる未来が開けてるってのに」
「その洋々たる未来というのは、誰が決めるんだ?」
 尋ねると、コーアは苦笑した。
「あんた、海軍に入りたくなかったのか」
「入りたくなかった」
「じゃあ抵抗すればよかったのに」
「それも面倒だった。どちらでもよかったんだ。入ろうが入るまいが」
 そう、別にどちらでもいいのだ。いつも、そうやってきた。だから、航海をぶじ終えてネイと結婚しようが、このまま永遠にルトヴィアの地を踏まぬことになろうが、実はたいした差はない。
 たぶん自分は、少しばかりの書物と、紙とペンがあれば、それで充分なのだ。周囲で何か起ころうが、それさえあれば、どうでもいい。
「あんたは本当に、面白い奴だね」
 コーアの言葉に、我に返った。彼の顔は笑っていたが、片方だけのぞく黒い瞳は、決して笑っていなかった。怒りのような、憐れみのような、なぜそんな目で見られるのか、ランゾットにはわからなかった。

須賀しのぶ『天気晴朗なれど浪高し。』


「流血女神伝」シリーズの番外編2冊読了。このシリーズが目に留まったのも実はこのタイトルからだけれど、著者がことわるとおり日露戦争は全く関係なかった。

「砂の覇王」編でガゼッタ海軍の提督となり海賊トルハーン討伐を命じられたランゾット・ギアスとまだトルヴィン・コーアと言う名だったトルハーンの二人が海軍の士官見習いだった頃の話。

 一巻目は海を嫌い小説家になろうとネタばかり探しているギアスの初航海で起こった事件をミステリタッチで描き、二巻目ではその後日譚的としてランゾットの恋が描かれている。
 一巻目のあとがきで「軽くてアホなもの」という依頼で決まったと語っていて、肩の力を抜いて読める。思っていたよりもずっと楽しめる作品だった。

 なんといっても主人公ランゾット・ギアスのとぼけた語りがおもしろい。本編でもこういった語りが得意な感じだったが、この番外編では全編通じてこの調子で楽しめる。

 それだけでなく小説のことばかり考えていたランゾットが次第に海に惹かれていくさま、また一人の女性に惹かれていく心の動きもしっかり描かれている。

 特に、小説家になろうとする彼の背後に未来に対して投げやりになっているところが透けてみえるところには共感を覚えた。

 二巻は筋運びがやや強引な気もするけれど、コーアをはじめさらに「アホ」な描写が増えて笑える。

 本編を知らない人も単独で読むことができるし、その一方回想録などを通して本編の今後を匂わせることもしていてシリーズのファンも楽しめるようになっていてうまいと思う。
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