深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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大岡昇平(編)『中原中也詩集』
中原中也詩集 (岩波文庫)中原中也詩集 (岩波文庫)
(1981/01)
中原 中也

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 月夜の晩に拾つたボタンは
 指先に沁み、心に沁みた

 月夜の晩に、拾つたボタンは
 どうしてそれが捨てられようか?

中原中也「月夜の浜辺」より



 今年は中原中也の生誕100年にあたるということで、教科書程度でしか読んだことのなかったことを恥ずかし思い読んでみました。月夜の晩に拾った何の役にも立たないボタンにどうしようもなく感情移入してしまう、上に一部引用した詩などはとても好きですね。中也の詩は難解なものはそんなに多くなくて、素直にいいなと思えるものが多い気がします。

 この岩波文庫版の詩集には、生前に編まれた「山羊の歌」と死後に発表された「在りし日の歌」の二つの詩集全編と、未刊行の詩や短歌などから編者が選んだ数十篇が収録されています。収録数は多い割りに、スペースをゆったりととってあって読みやすいです。
 中也の詩はリズムがとてもいいと思う。何度も同じフレーズを繰り返したり、ですます調にしてみたり、素朴な田舎言葉を使ってみたり。そして何でもない町の風景だったり、食べ物だったりの中に詩を見つけ出していて、言葉の豊かさを感じさせてくれる気がする。

 二つの詩集を比べると、「山羊の歌」は風景を描きながら静かな悲しみに満ちているような作品が多く、「在りし日の歌」のほうはやや抽象的でユーモラスな印象を受ける作品が多いかなと思う。

 芸術を遊びごとだと思つてるその心こそあわれなりけれ

 蚊を焼けどいきもの焼きしくさみせず悪しきくさみのせざれば淋し

「初期短歌」より

 そして私はえたいの知れない悲しみの日を味つたのだが
 小さきものはやがて大きくなり
 自分の幼時を忘れてしまひ
 大きなものは次第に老いて

 やがて死にゆくものであるから
 季節は移りかはりゆくから
 ひからびたおれの心は
 ひからびた上にもひからびていつて

 ひからびてひからびてひからびてひからびて
 ――いつそ干割れてしまへたら
 無の中へ飛び行つて
 そこで案外安楽に暮せらるのかも知れぬと思つた

「ひからびた心」より

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