深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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須賀しのぶ『流血女神伝 砂の覇王』
砂の覇王〈1〉―流血女神伝 (コバルト文庫)砂の覇王〈1〉―流血女神伝 (コバルト文庫)
(2000/03)
須賀 しのぶ

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 ルトヴィアの聖官たちは、死の間際は、ただタイアスの慈悲だけを望み、タイアスのみもとに呼ばれることを喜ぶようにと説いていた。心安らかにいれば、タイアスの手が差し伸べられる。しかしこの世に強い執着をもっていたり、深い恨みを抱いていると、タイアスに疎まれ、妄執の闇に堕ちて永遠にさまようことになるのだと。
 それでもいいと、カリエは思った。タイアスの慈悲などいらない。どうせ自分は、はじめからタイアスに疎まれているのだ。そうでなければ、これほど次々と災難がふりかかるはずがない。ジィキが言ったとおり、きっとタイアスとは対極の、禍つ神の守護がついているのだろう。だから今さら、タイアスに縋ろうとは思わない。むしろ、喜んで闇に堕ちてやろう。そして、こんな苦しみを与えた全てのものたちに復讐してやるのだ。

須賀しのぶ『流血女神伝 砂の覇王3』


「帝国の娘」編に続き「流血女神伝シリーズ」の「砂の覇王」編全9巻読了。これはおもしろかった。

 前作で生きたいと望み、カデーレを脱出したカリエとエド。あえて治安の悪い道を選んだ二人だが、カリエは一晩を過ごした家の少女サジェの身代わりとして奴隷商人に売られてしまう。

 サジェの家族を斬り、サジェとカリエの身柄を交換しようと追ってきたエドともども、カリエが送り込まれたのは砂漠の国エティカヤ。兄シャイハンと家督をめぐって対立し、その放蕩のゆえに辺境に追いやられた王子バルアンのハーレムだった。

 バルアンに取り入りエドに対する恨みを晴らそうとするサジェを阻止するため、カリエはバルアンの寵を得ようと決意するが……。



「天翔けるバカ」シリーズを読んだときは、オリジナル・キャラクターは弱いのかなと思っていたが、強い性格のキャラが多く登場して楽しませてくれた。
 異なるルールが支配する世界の中で、厳しい現実、政治の動きに巻き込まれていく女性たちの姿が特に印象的だった。なかでも自らが神に利用されたにすぎないと女神に告げられ憤死するサジェの姿は圧巻。

 また辺境に雌伏するバルアンの他人をどこまで利用し、野望を果たそうとする強い性格もいい。栄華など虚しい、それを承知の上で取りにいく、そうでなければだめなのだというのはなるほどなと思った。

 そして何より主人公カリエが魅力的になっている。前作では子どもに過ぎなかった彼女が女性として、また一人の人間として成熟していく姿が微笑ましい一方で、寂しかったりもする。

 滅亡したギウタ皇国の皇女として利用され波乱に満ちた毎日を送りながら、「かわいそう」と憐れまれる生き方はしていないと顔を上げる少女の姿は美しく胸を打った。


 今回は各登場人物の神秘体験の描写が増え、神や宗教が人物たちの行動に影響を与えていく。「女神の娘」という主人公の設定が物語りにどう関わってくるのか続きが楽しみ。
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