深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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大竹文雄『経済学的思考のセンス』
経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)
(2005/12)
大竹 文雄

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 構造改革や財政再建のためには、失業率上昇という「痛み」に耐えることが必要かもしれない。しかし、「失業率上昇という痛み」の期間はできるだけ短いほうがいい。それに、「痛み」が犯罪の増加や自殺の増加という、より深刻な副作用をともなわないような、雇用政策の「改革」が急務である。「痛み」を一部の失業者にだけ押しつけることによって、多数の失業しなかった人々は、「痛み」を感じないですむ。そのため、企業の経営危機や国の財政が悪化した時には、リストラや歳出カットによる失業率上昇政策のほうが、ワークシェアリングや増税による雇用創出より選ばれる可能性が高い。しかし、失業率上昇には、犯罪や自殺の増加というより深刻な「社会的な痛み」が存在する。この「社会的な痛み」は、やがて社会不安という大きなコストとして、私たちに跳ね返ってくることを忘れてはならない。

大竹文雄『経済学的思考のセンス』


 タイトルから想像していた内容とは少し違ったけれど、とてもおもしろい本だった。

 著者のいう「経済学的思考のセンス」とはインセンティブから人の行動を見るという視点、そして相関関係から安易に判断を下さず、その背景にある因果関係を探り出す力のこと。

 本書の前半では、なぜ理想の結婚相手に「身長の高い人間」という条件が入るのか、プロ野球の制度改革といった身近な問題が経済学の視点からどう見えるかが扱われている。
 しかし著者の専門が労働経済学のらしく、後半の労働問題や格差をテーマにした部分がそれ以上に興味深かった。

「格差」が統計指標にあらわれていても、そこには高齢者などの給与所得がない層の増加といった要因が影響を与えていたりする。現実に格差が存在するのか、という面ですら議論がわかれるのがわかる。

 日本では無駄をなくすことが小さな政府を目指すということだと混同されていて、本来別の問題である、社会保障や所得の再分配という問題を意識せずに小さな政府論に同調しているのではないかというような指摘はなるほどなとうならされた。

 またアメリカも格差の大きい社会だけれども、社会が流動的が希望につながっていて人々のインセンティブを損なわない要因になっているという。ヨーロッパ的な社会を志向するのか、アメリカ的な社会を志向するのか、決断する時期にきているというのもうなずける。

 タイトルからはわかりにくいが、そういった労働問題、格差問題を扱った本として秀逸だと思った。
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