深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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根井雅弘『物語 現代経済学』
物語 現代経済学―多様な経済思想の世界へ (中公新書)物語 現代経済学―多様な経済思想の世界へ (中公新書)
(2006/07)
根井 雅弘

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 マーシャルは、人間性は進歩するという信念をもっていたが、彼が生きていた時代においては、「経済騎士道」の精神がすべての人々に浸透しているとはとても言い難かった。それゆえ、例えば、性急な「集産主義」(今日の言葉では、ほぼ「社会主義」の意味)のプログラムが成功する見込みは薄いと判断していた。たしかに、若き日のマーシャルは、社会主義たちの「社会福祉に対する骨の折れる私心のない献身」を深く尊敬し、経済学研究の所期に社会主義関係の文献(カール・マルクスやF・ラサールなど)を読んだといわれているが、結局、社会主義の教えに与することはできなかった。なぜなら、社会主義の理想を実現するには「経済騎士道」精神が必要なのだが、それはいまだに人々のあいだに浸透していなかったからである。それゆえ、彼は、次のように結論づけたのである。


 自由企業の下にある世界は、経済騎士道が発展するまでは、完全な理想から程遠いだろう。しかし、それが発展するまでは、集産主義の方向へのどんな大きなステップも、現代の程よい進歩率の維持にとってさえ由々しい脅威である。

根井雅弘『物語 現代経済学』


 本書はマーシャルやケインズ、ガルブレイスなどの経済学者を取り上げながら、現代経済学のあまり知られていない側面を紹介したもの。

 その背景には、「市場原理主義」的な考えが主流となる中で、それに対して疑問を投げるものが一笑に付されるような状況に対する危機感がある。

 そしてかつての経済学はもっと多様性を抱えたものであり、現代の経済界もその多用性を取り戻し、自らの考えを「相対化」する思想にも寛容であるべきだと主張している。
 経済学に対するある程度の知識が前提とされていて少し難しかったけれど、個々の章は短くいので割合あっさりと読める。

 マーシャルが公共性を重視し困難に挑む「経済騎士道」と呼べるものを重視していたというのは知らなかったし、ケインズの「利子生活者の安楽死」という考えに改めて興味を持った。

 そして「ノーベル経済学賞」の受賞者がいくらか偏っていて、その権威でもって一般の人にある価値観を正しいものと考えさせてしまうような側面があるというのも知らなかった。

 最後には豊富な文献案内がついていて参考になった。そこからいくつか読んでみたい。
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