深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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遠藤周作『ただいま浪人』
ただいま浪人 (講談社文庫 え 1-8)ただいま浪人 (講談社文庫 え 1-8)
遠藤 周作

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(元気をだして、お父さん)
真理子はそう心のなかで父親に呟きながら、一方、家に戻れない弟の心境も手にとるようにわかり
(いいのよ、帰ってきなさいよ。、心配しないで……)
どこかにいる弟にそう言いつづけていた。
「お母さん」
いつまでも、台所にいる母親に、彼女は
「もう、お休みなさいよ」
母親は何と古い重箱やお皿まで出して、それをふいていたのだった。台所に鯛のおかしらが大皿に置かれているのが、何とも言えず辛かった。信也の合格を信じて菊江が魚屋にたのんだものなのである。
「ねえ、お母さん」
「え?」
「もう、お休みなさいよ。私が……起きているから、大丈夫よ。きっと戻ってくるわよ。そんな意気地なしじゃないもの、あの子は
黙って、うつむいた菊江の眼からポタポタと泪が床におちるのを真理子は見た。
(馬鹿、信也の馬鹿)
彼女はこんなに両親に心配をかける弟に腹が立ち
(私だって、いつまでも、そう甘くないから)
と心のなかで叫ぶのだった。

遠藤周作『ただいま浪人』


『青い小さな葡萄』は久しぶりに読んだ遠藤周作の作品だった。その時に思い出したことは、もう一冊積読になっている作品があることだ。

 私が少しは本を読む人間だと聞きつけた伯母さんがこれでも読みなさいと送ってくれたのが、この『ただいま浪人』だった。しかしその頃はもう遠藤周作から他の作家へ関心が移っていて、ほったらかしたままになっていた。

 しかし久々に遠藤周作を読んでこのことを思い出し、いささかの後ろめたさと懐かしさから、本棚から引っ張り出してきて読むことにしたのだった。
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村上宣寛『IQってホントは何なんだ?』
IQってホントは何なんだ? 知能をめぐる神話と真実IQってホントは何なんだ? 知能をめぐる神話と真実
村上 宣寛

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 キャテルの知能理論で有名なのは、知能が流動的知能Gfと結晶的知能Gcの二つの因子から構成されると考えた事である。流動的知能Gfは生物学的側面のgで、成人以降は減退する。空間能力や速度に関係する知能である。一方、結晶的知能Gcは教育や文化の影響を受けるgで、年齢を重ねても減退せず、むしろ上昇する知能である。言語能力や知識などに関係する知能である。なお、キャテルの分析によると、流動的知能と結晶的知能の相関は0.5程度あるので、上位因子として一般知能gが見いだされる。

村上宣寛『IQってホントは何なんだ?』


『「心理テスト」はウソでした』がおもしろかったので、引き続いて同じ著者によるこちらの本も手に取ってみることにした。

 特にミステリなどの漫画などでは、主人公の頭脳の明晰さを表現するためにIQ(知能指数)がしばしば登場し、その数値も180とか200とか、インフレ化している印象を持っていた。

 しかし実際のところ、それがどのようなものでどのように測定されるものなのか、問われれば言葉に詰まってしまう。(偏差値とごっちゃになって、標準偏差は10だと思っていたし)。その辺りをはっきり知るのも面白そうだと思ったのだ。
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下條信輔『まなざしの誕生』
まなざしの誕生―赤ちゃん学革命まなざしの誕生―赤ちゃん学革命
下條 信輔

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 たとえば、このマシンは最初、知性を持った個体とただのものの区別や、自分自身とほかの個体との区別さえおぼつかないかも知れない。しかしやがて――多少の前提条件を置けばの話だが――、それらのものにはたらきかけたときの応答性のはっきりしたちがいに気がついて、おおざっぱな区別をはじめるようになる。つまり、まったくののっぺらぼうの一般性の中から、一番基本的な特殊性を形成しはじめる。
 そして前にも示したとおり、この特殊性はそれ自体ふたたびひとつの一般性(地)となり、動物と人間のちがい、さわることと見ることの違い、音と言語音のちがいなどの新しい特殊性(図)の分化する土台となっていく。ことばや数字を扱う能力については、それほどあわてなくても、こうした基本的な世界観や社会的スキルが十分に発達したあとで、ゆっくりと学ぶ機会があるだろう。
 こうして、次のような逆説的な構図が浮かびあがってくる。――つまり、学ぶ能力や知能については、周辺的な機能にすぎないと思われたインターフェース/コミュニケーションの機能が、本当はそれらの中核にあり、逆に中核にあると思われた文法能力や計算能力などは、じつは周辺的な機能にすぎないと言えるのではないかと。

下條信輔『まなざしの誕生』


『サブリミナル・インパクト』のところでも触れたが、たまたま新古書店で見つけた『サブリミナル・マインド』は私に学問としての心理学ってこんなにずっとおもしろいものなんだと思わせてくれた一冊だった。

 この『まなざしの誕生』は、その著者が20年以上前、30歳を過ぎた頃に書き上げた意欲作で、2006年に新装版として出版されたものになる。

「赤ちゃん学革命」というサブタイトルが示すように、赤ちゃんがどのような感覚を持っていて、どのように学び、発達していくか、当時の最新の研究がレビューされている。そして、ただただ未熟な存在だとされがちな従来の赤ちゃん像に代わる、新しい赤ちゃんのイメージをつくりあげようという著者の意気込みの伝わってくる刺激的な内容になっている。
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菅野泰蔵(編)『こころの日曜日』
こころの日曜日―45人のカウンセラーが語る心と気持ちのほぐし方こころの日曜日―45人のカウンセラーが語る心と気持ちのほぐし方
菅野 泰蔵

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 カウンセリングを受けることは、いとまのない人生の営みに、自らの手で踊り場を作ることのように思われます。踊り場に安定した姿勢で立ち、ゆったりした気持ちで見れば、同じ景色もさほど脅威を感じないものです。しかし、あせりにかられている人には、踊り場にしばしたたずむことがひどくもどかしく感じられます。半歩でも高く登らなければ人に先んじられ、自分一人が取り残され、競争に敗北するように感じるのです。
 カウンセラーは、あせる心に付き合い、労をねぎらい、来し方行く末を一緒に味わいながら眺め、前に進む気力が満ちるまでを共にする人なのです。出立の時に至れば、先の苦労を思いつつ幸多かれと祈り見送るしかありません。せめて、共にしたわずかの時間、苦しみや不安を我身にしみこませんばかりに話を聴くことができれば、これにまさる援助はないというのが最近の実感です。

菅野泰蔵(編)『こころの日曜日』


『心理学の「現在」がわかるブックガイド』を通読した時はあまり気にも留まらなかったのだけれど、目次を眺めていてタイトルがいいなと思い、読んでみたいと思うようになった。

「45人のカウンセラーが語る心と気持ちのほぐし方(文庫版は44人)」とあるように、診療所、大学病院などで実際のカウンセリングの現場での体験談を思ったこと、感じたことなどがまとめられている。

 ちなみに『ブックガイド』では、文庫・新書で読めるということで紹介されているのですが、単行本のほうしか在庫がないよう。私が読んだのも図書館で借りた単行本の方で、リンクもそちらに貼ってあります。
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