深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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開高健『パニック・裸の王様』
パニック・裸の王様 (新潮文庫)パニック・裸の王様 (新潮文庫)
開高 健

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「灯が消えてるじゃないか」
 彼の後ろから見あげると、屋上からあげた夜間用の宇宙人のアドバルーンが巨大なクラゲのような夜にとけてただよっていた。合田はすばやく窓に背をむけ、照明業者の番号を暗誦しながら机の電話にいつものせかせかした足どりで戻っていった。その後姿に私は小さな感慨をおぼえた。
(一人で戦争している……)

開高健『パニック・裸の王様』「巨人と玩具」より


 私にとって開高健の存在は長らく、大江健三郎のあの「死者の奢り」を抑えて芥川賞を受賞した作家というものだった。『死者の奢り・飼育』の解説でだったか、そのことを知ったときは衝撃だった。

 そして関心の赴くままに、最高傑作といわれる『輝ける闇』を手にとってみた。しかし、ベトナム戦争への従軍体験をもとに描かれたそれはあまりに重くて苦しかった。

 だから続く『夏の闇』やこの『パニック・裸の王様』も購入したまま放置していたのだが、やはり「裸の王様」だけでも読んでみたいと思い出して引っ張り出してきた。
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小林多喜二『蟹工船』
蟹工船・党生活者 (新潮文庫)蟹工船・党生活者 (新潮文庫)
小林 多喜二

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「おい地獄さ行ぐんだで!」
 二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。――漁夫は指元まで吸いつくした煙草を唾と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い船腹をすれずれに落ちて行った。彼は身体一杯酒臭かった。
 赤い太鼓腹を巾広く浮かばしている汽船や、積荷最中らしく海の中から片袖をグイと引張られてでもいるように、思いッ切り片側に傾いているのや、黄色い、太い煙突、大きな鈴のようなヴイ、南京虫のように船と船の間をせわしく縫っているランチ、寒々とざわめいている油煙やパン屑や腐った果物の浮いている何か特別な織物のような波……。風の工合で煙が波とすれずれになびいて、ムッとする石炭の匂いを送った。ウインチのガラガラという音が、時々波を伝って直接に響いてきた。

小林多喜二『蟹工船』


 ここ最近更新が滞っており申し訳ありません。

 中原中也作品集を一通り聴き終えて、たまっていくばかりの朗読音声を崩そうと、小林多喜二の『蟹工船』を選んでみました。やはり同じ朗読でも、詩と比べるとストーリーがある分、内容もずいぶんと把握しやすいように思います。

 少し前に『蟹工船』ブームということで、この時代に『蟹工船』がよく売れるという社会現象がありました。現代の若者をめぐる労働環境と重ね合わせられ、共感を呼んだというのです。

 流行に乗って本をとることはなかったものの、やはり気にはなっていたのです。
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