深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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曽村保信『地政学入門』
地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721))地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721))
曽村 保信

中央公論社
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 ソ連は、しばしば大陸国家だといわれる。が、とくにその中心部についてみるとき、白海とバルト海、そして黒海という周辺部の運河または上記のような河川の体系によって互いに結ばれている。もとより大型の船舶はこれらを航行できない。しかしながら三千トン内外の、優に外洋の航海にたえられるだけの艦船が、内陸を自在に往来できるのは、この国だけである。したがって、このことは戦略的にみて、大変重要な意味をもっている。
 たとえばモスクワ近在の工場の製品を積載した船は、まず黒海に出てから、さらに地中海を経て、世界の各地に物を運ぶことができ、その間に荷物を積み替える必要がない。あらゆる商業用船舶が軍の統制下にあるソ連では、武器の積み出しももちろん同時にできる。そして場合によっては、アマゾン川をさかのぼってキト(エクアドル)の近辺まで行くこともある。こうしてソ連国内の水系は、南米のアンデス山脈までつながっているわけだ。このように国内の河川航運と外洋における海運とをひとつなぎにしてみたのが、つまりソ連の“水運”である。

曽村保信『地政学入門』


 地政学というと、お話にすぎないとばっさり切り捨てる向きも比較的多く、うさんくさい印象を持っている方も多いかもしれない。

 しかし都市の誕生挿話には名将が草の生えた土地の発展性を見抜いたというものが多くあるし、兵法家が歩き回って要害の地を見つけたり、土地の特性みたいなものが何かしらあるような気もする。

 そういう一種の山師的な魅力を地政学には感じ、勝手なイメージを抱いていたのだけれど、実際の学問としての地政学というのはどういうものだろうと思っていて、この本を手にとってみた。
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陽気で、坦々として
 最近はなかなかゆっくりと本を読む時間も取りにくいので、iPhone に録りためた NHKラジオの朗読を入れて、作業をしながら聞いていたりします。

 片手間で聞いているのでほとんど頭に入らない自己満足の世界ですが、不意に飛び込んできたフレーズに心を奪われることがあります。

「陽気で、坦々と、而も己を売らないこと」という一節もそんなひとつで、深く共感してしまいます。
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山本一力『あかね空』
あかね空 (文春文庫)あかね空 (文春文庫)
山本 一力

文藝春秋
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 永吉がいれば、豆を挽いても案ずることはなにもなかった。調子が狂えば、父親が叱ってくれた。
 豆腐の造り方から油揚げの揚げ方、茶碗豆腐の造り方まで、しっかりと永吉から教わっていた。父親が風邪で起きられなかったときは、おふみとふたりで熟した。
 土間に永吉がいなくても、悟郎は不安に思うこともなかった。父親よりも豆腐造りに長けていると思ったことさえあった。しかし、いまはひとりだ。
 初七日が明けて、ひとりで造る怖さを思い知った。
 親父も蛤町で豆腐屋を始めたときは、こんな気持ちだったのか………。
 目の前の永代寺が途方もなく大きく見えた。このさき京やの豆腐を造って行けるのか。悟郎は不安で胸が押し潰されそうだった。
「悟郎……そろそろ始めないと……」
 気がつかない間に、おふみがわきに立っていた。母親の目は濡れていたが、涙の奥に宿る怯えのひかりが、暗いなかでもはっきり分かった。
 立ち上がった悟郎は、思い切り深く息を吸った。それをゆっくり吐き出した。
「分かったよ。始めよう」

山本一力『あかね空』


 NHKの「週間ブックレビュー」を見ていた母親から山本一力さんの本を読みたいというリクエストがあった。『天地明察』を読んで時代小説を好きになったのかもしれないが、低い声で落ち着いて話す作者の人柄もよかったのだろう。

 この『あかね空』は、第回の直木賞を受賞した作品ということで話題にのぼったことを覚えていたこともあり、入手も容易なので、手始めによいだろうと思って図書館で借りることにした。

『あかね空』は、江戸時代、京豆腐の修行をした男が一念発起して江戸の下町に構えた豆腐屋「京や」を舞台に、さまざまな苦労、紆余曲折を経ながら店を守り抜いていく親子二代の姿を描いた物語。
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