深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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須賀しのぶ『神の棘 1』
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須賀 しのぶ,多田由美

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「よくわからないよ。ええと、じゃあ僕がしたければ、してもいいの?」
「するなとは誰も言えない。しろとも言えない。決めるのはおまえだ。誰かに言われたからとか、神様が駄目だと言ったとか、そういうのはまやかしだ。決断を自分以外のものに委ねてはいけない」
 テオドールは厳しい顔で言った。
「ただ、おまえの決断によって、辛い思いをする他人がいるということを忘れてはいけない。だから、自分がやってしまったことを一度でも後悔したなら、その痛みを死ぬまでずっともっているべきなんだ。悪魔が見えるなら、目を背けず、見ないといけない。カーテンをひいて、明るい家の中に閉じこもっていても、それはいなくはならないんだ」
 ――今でも、あのときのテオドールの表情と言葉をはっきりと思い出すことができる。

須賀しのぶ『神の棘 1』


「スイートダイアリーズ」「芙蓉千里」に続いて、須賀しのぶさんの最新作を手にとってみる。

 こちらは7月と8月二ヶ月連続の刊行となったもの。書き下ろしの作品ということで、一般進出後も精力的に活動されているようで嬉しくなります。

 こちらはナチスの親衛隊SSの青年隊員で、常に冷静沈着なアルベルト・ラーセンと
幼なじみで修道士の熱血漢マティアス・シェルノの対照的な二人を中心にヒトラー統治下のドイツを描きとおした作品。
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平田オリザ『演劇入門』
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 しかし、一方で、私たちは、発語の際に、常に、例えば相手が自分の言っていることをどのくらい理解しているかを気にしながら話している。それだけではない。相手との距離、部屋の大きさ、外からの雑音などなど、さまざまな要素から、無意識のうちに影響を受けて、私たちは他者と言葉を交わしている。すなわち私たちは、主体的に話していると同時に、環境によって「話をさせられている」のだ。
 あまり難しく考える必要はない。例えば、汽車の中で「自分から話しかける」に手を挙げた人でも、相手が明らかにやくざ者に見える男だったら、自分から声はかけないだろう。逆に、「自分から声をかけない」というほうに手を挙げた人でも、相手が何かものでも落とせば、声をかけずにはいられないだろう。私たちはこのように、常に、私たちを取り巻く現場によって、喋らされているのだ。

平田オリザ『演劇入門』


 今の日本で最も精力的に活躍されている劇作家、演出家の一人ではないかと思われる平田オリザ氏。というか、現代劇の方面にはとんと疎いので確かなことはわからない。

 そんな私が著者の名前を知っているのは、かなり前にラジオでの対談を聴いてことがあるから。その内容は今ではおぼろげになってしまったけれど、著者のことは強く印象に残っていた。

 本書は、著者が自らの劇作の方法、演出の方法を語っていきながら、演劇について考えていくもの。
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須賀しのぶ『芙蓉千里』
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須賀 しのぶ

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「山村さん。ちょっと、見ていてくれますか」
 フミは抱えていた荷物を、近くの街灯の下に置いた。山村が怪訝そうな顔をする。
「なんだ? 花摘みか?」
「いえ、荷物を見るんではなくて、私の芸を見てください。まだ女郎としてお礼ができないから……」
 体の中を荒れ狂う、暴力のようなこの感動を、山村に知らせたい。しかしフミは、それを伝える言葉をもたなかった。
「だから、今の私ができる最高の芸を」
 フミの体が、大きく跳ねる。今のちっぽけな自分が、一番的確に伝えられる方法は、これしかない。
 ひとつの感情以外のものを全て切り捨て、軽くなった体が、軽やかに舞う。
 獅子のように。鷲のように。空に永遠に憧れ、飛ぼうとすることをやめない、人間のように。
 重力の呪縛から逃れた体は跳びあがり、捻られ、そしてたしかに一瞬、飛翔した。
 少なくとも、山村の目にはそう見えた。

須賀しのぶ『芙蓉千里』


『スイートダイアリーズ』に続いて、須賀しのぶさんの一般進出第2作の『芙蓉千里』を手にとってみる。

 こちらは角川書店の携帯小説サイト「小説屋sari-sari」で現在も連載されているものを単行本にまとめたもの。

 この「芙蓉千里」は三部作として構想されているようで、こちらは第1部に当たる。だからといってこの巻だけを読んでも十分に楽しめる作品だった。
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A.A. ミルン『プー横丁にたった家』
プー横丁にたった家 (岩波少年文庫(009))プー横丁にたった家 (岩波少年文庫(009))
A.A. ミルン,E.H.シェパード,A.A. Milne,石井 桃子

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「それは、きみが悪いんだよ、イーヨー。きみは、だれのとこへも、たずねてきたことがないじゃないか? きみは、この森のすみっこにじっとしていて、ほかの者が、きみのとこへやってくるのをまってるんだ。どうして、たまには、きみのほうから出かけないんだね?」
 イーヨーは、しばらくうだまってかんがえていましたが、やがて、
「おまえのいうことにも、一理あるかもしれぬ。わしは、おまえさんがたをなおざりにしてたよ。もうちっと出歩かにゃならん。出たりはいったりせにゃならん。」
「そうなんだよ、イーヨー。気のむいたときには、いつでも、だれのところへでもかまわないから、たずねてきたまえよ。」

A.A. ミルン『プー横丁にたった家』


『クマのプーさん』を読んですっかり満足してしまっていたのだけれど、『プー横丁にたった家』という続編があることを知って、ついでと言ってはなんだけれど読んでおこうと思い立った。

 どうせなら「iBooks」で英語で読みたいなと思ったけれど、ストアには『The House at Pooh Corner』は見つからなかったので(その点ではこのアプリもまだ発展途中ですね)、日本語訳を借りてきた。

「プー横丁」と聞くと区画整理された街中を思い浮かべてしまうけれど、中身は紛れもなく「クマのプーさん」の続編。クリストファー・ロビンとクマのプーを中心とした愉快な仲間たちの森での生活を描いた物語。
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