深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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隆慶一郎『死ぬことと見つけたり』
死ぬことと見つけたり〈上〉 (新潮文庫)死ぬことと見つけたり〈上〉 (新潮文庫)
(1994/08)
隆 慶一郎

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死ぬことと見つけたり〈下〉 (新潮文庫)死ぬことと見つけたり〈下〉 (新潮文庫)
(1994/08)
隆 慶一郎

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「だから武士たるものは、全力を尽くしてその地位に登るために励まねばならぬ」
 詭弁だ、と求馬は思った。立身出世のために全力を尽くすなんて、そんなみっともないことが出来るか。それこそ武士の面汚しだ。武士の本分から遠く離れたものだ――。
「私の欲のためにするなら、確かにその通りだ。だがわしの云うのは違うぞ。武士たるものの本分を尽くすために、何事にも耐え、悪口にもさげすみにも耐え、ひたすら殿にとり入り、御老職にとり入り、死にたくなるような恥辱にも耐えて、その地位を掴めと云うのだ」
 みっともない、だの、武士の面汚しだ、などと軽々しく云うな。そんなことをほざいている奴こそ、私のために楽をしているではないか。苦労するのがいやだから、そんなことを云っているだけじゃないか。
「わしは明けても暮れても、立身出世のことことばかり考えてきた。気の遠くなるような、長い、辛い道だった。だが、見ろ。今日、わしは本望かなって、無事に武士の本分を果して楽して死んでゆく。これほどの死がまたとあろうか。わしは天下の倖せ者だ」
 そうして父は、顔をあおのけて、大笑いに笑った。しんから倖せそうな笑いだった――。

隆慶一郎『死ぬことと見つけたり 上巻』


「天地人」は一度見るのを忘れてそのままになってしまったが、直江兼続といえば前田慶次、前田慶次とえば隆慶一郎である。

 与太話だけれども、前から気になっていたけれど、凄惨な感じ、未完であるということからなかなか手が伸びなかった本書へのきっかけになれば何でもよかった。

 本書はその晩年に作家デビューをし、多くの人間を勇気づけた隆慶一郎の最後にして未完の長編作品。タイトルどおり鍋島武士道を題材にした連作短編的な作品。
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森達也『いのちの食べかた』
いのちの食べかた (よりみちパン!セ)いのちの食べかた (よりみちパン!セ)
(2004/11/19)
森 達也

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 もう一度書くよ。そもそも僕らの営みは、人を傷つけたり傷つけられたりすることであり、これは人を愛することや愛されることと同義なんだ、同義。分かるよね? 同じ意味。人を愛さない人はいない。だから人を傷つけない人もいない。君も、あなたも、彼も、彼女も、いつも誰かを愛しながら、いつも誰かを傷つけている。これが人生だ。何十億ものそんな営みが、この世界を作り上げている。

森達也『いのちの食べかた』


『この世で一番大事な「カネ」の話』と同じ「よりみちパン!セシリーズ」から評判のよさそうなこちらを読んでみた。

 本書は普通に生活しているだけではなかなか知ることのできない食肉の解体はどこでどのように行われているのかを取材したもの。

 さらに動物の解体がタブーとして隠されている理由に踏み込み、私たちの社会がはらむ穢れや差別といった問題へ進んでいく。
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松下幸之助『道をひらく』
道をひらく道をひらく
(1968/05)
松下 幸之助

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 時を得ぬ人は静かに待つがよい。大自然の恵みを心から信じ、時の来るを信じて、着々とわが力をたくわえるがよい。着々とわが力をたくわえる人には、時は必ず来る。時期は必ず来る。

松下幸之助『道をひらく』


 先日、NHKのクローズアップ現代を何気なく見ていたら、従業員に優しい経営が見直されているという特集をやっていた。

 その関係でまた松下幸之助の本が売れているという。そういえば家の本棚にも一冊あったなということで引っ張り出してきた。

 偶然だけれど、番組中に紹介されていた「好況よし、不況またよし」という言葉も収録されていて丁度よかった。
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バートランド・ラッセル『ラッセル 幸福論』
ラッセル幸福論 (岩波文庫)ラッセル幸福論 (岩波文庫)
(1991/03)
B. ラッセル

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 それはちょうど、ヒンズー教の妻の殉死がヨーロッパの傍観者の目に映ったとおりのものでなかったのと同様だ。おそらく、九分九厘まで、未亡人は、栄光のために、また宗教がそう命ずるがゆえに、進んで犠牲者として焼死しようとしているのだ。このビジネスマンの宗教とそう命ずるがゆえに、進んで犠牲者として焼死しようとしているのだ。このビジネスマンの宗教と栄光は、彼に金をどっさりもうけることを要求する。そこで、ヒンズー教の未亡人のように、彼はこの苦痛を喜んで受けるのである。このアメリカ人のビジネスマンがもっと幸福になりたければ、まず、その宗旨を変えなければならない。彼が成功を望むだけでなく、成功を追及することは男の義務であり、そうしない男はつまらない人間だ、と心から信じているかぎり、彼の生活は依然としてあまりにも全力投球型で、あまりにも不安にみちているので、幸福なものにはならない。バートランド・ラッセル『ラッセル 幸福論』


 ヒルティの『幸福論』、アランの『幸福論』と読んできたので、岩波文庫で最後に残っていた『ラッセル 幸福論』を読んでみることにした。

 本書はラッセル58歳のときの作品で、ラッセルが自らの経験と観察によって確かめ、実際に幸福をいやましたものをまとめて、読者に処方箋として提供しようとしたもの。

 前半部分では、不幸の原因となる要因を分析し、残りの後半部分で幸福をもたらす要因について語っている。皮肉のきいた文章にはじめはとっつきにくさも感じたが、慣れるとすらすら読めた。
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西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』
この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)
(2008/12/11)
西原 理恵子

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 生きていくなら、お金を稼ぎましょう。
 どんなときでも、毎日、毎日、「自分のお店」を開けましょう。
 それはもう、わたしにとっては神さまを信じるのと同じ。
 毎日、毎日、働くことがわたしの「祈り」なのよ。
 どんなに煮詰まってつらいときでも、大好きな人に裏切られて落ち込んでるときでも、働いてれば、そのうちどうにか、出口って見えるものなんだよ。
 働くことが希望になる――。
 人は、みな、そうあってほしい。これはわたしの切なる願いでもある。

西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』


『ぼくんち』に衝撃を受けたので、少し前に話題になったこちらを読んでみることにした。

 タイトルからは、何となく拝金主義的なえげつない臭いがして敬遠していた。装丁も一万円札をベースにしたもので結構どぎつい。

 しかし内容はどちらかというと著者の自伝的な作品になっていて、著者の人生論・仕事論にもなっている。著者の絵も挿絵程度しかない。若者向けに書かれているので、あっという間に読めてしまうが、軽い本でもなかった。
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寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』
書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)
(2004/06)
寺山 修司

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 F・ローデルは「法は諸科学の中のキルリー鳥だ」と書いている。キルリー鳥は、うしろ向きに飛ぶ鳥であり、法もまた古来の原則や先例を墨守して、「革新を悪とし、旧套を徳としてきた」のであった。だから、正義はいまのところ、自らの国家を生成しようとしている革命家たちをのぞけば、きわめて保守的なものであり、そして「うしろ向きに飛ぶ」ものだ、ということになり、革命家を犯罪者に変えてしまう魔術師である。私は月光仮面がマントをひるがえして飛ぶとき、「前向き」だったか「うしろ向き」だったか、よく覚えていない。だが、マフラーと仮面という、「制服」で出勤してくる月光仮面をあてにしていたこともあったような気がする。それは、自己の限界につきあたったとき、その壁を破る「超能力」への期待であり、それを踏台にして、あるがままの自分を超克する――ということにつながるものであった。しかしそれが「正義の味方」であって、だれのためにも力を貸してくれるものではないのだ、と知ったときから疑いがはじまった。「正義」というのは、ただのオプチミスチックな政治用語であり、月光仮面は現体制が雇った用心棒にすぎないと知ったら、「正義の味方だ 良い人だ」というのは警察官募集のキャッチフレーズのように見えはじめたのである。それでも恥ずかしいことに、私の机の抽出しには今でも捨てる機会を逸した月光仮面の仮面が入っているのである。

寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』


 読書の合間に気楽に読めそうな本を探していたら、前から気になっていたこの本を見つけたので手にとってみた。

 本書は、詩や劇作など幅広い領域で膨大な著作を残したという寺山修司の出世作になった作品らしい。

「書を捨てよ、町へ出よう」「きみもヤクザになれる」「ハイティーン詩集」「不良少年入門」の4章から構成されている。
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