深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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和田誠・村上春樹『ポートレイト・イン・ジャズ』
ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)
(2003/12/20)
和田 誠村上 春樹

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 でもたしかに言われたとおりだった。このLPはずいぶん繰り返して聴いたが、どれだけ聴いても聴き飽きしなかった。すべての音、すべてのフレーズの中に、絞っても絞っても絞りきれぬほどの滋養が沁み込んでいた。そして若い人間の特権として、僕はその滋養を余すところなく、細胞の奥にまで吸い取った。そのころには街を歩いていても、僕の頭の中をモンクの音楽がぐるぐるとまわっていた。でも、誰かにモンクの音楽のすばらしさを伝えたいと思っても、言葉で適切にあらわすことができなかった。
 それも孤独の一つのかたちなのだ、と僕はそのときに思った。悪くない。寂しいけれど、悪くない。僕はそのころ、いろんな孤独のかたちをひたすらあつめていたような気がする。山ほど煙草を吸いながら。

和田誠・村上春樹
『ポートレイト・イン・ジャズ』


 知人の家にいったときに、「ポートレイト・イン・ジャズ」のオムニバスCDを聴かせてもらって、ジャズに関心を持った次第。一眼レフといい、流されやすいのも困り者ですが。

 本書はイラストレータの和田誠氏がミュージシャンを選出し描いたイラストに、村上春樹氏がエッセイを寄せるコラボ作品。

 この文庫版には単行本1作目と、2作目がまとめられている上に、書き下ろしも加えられていてお得感がある。挿絵は小さくなってしまうけれど。
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円地文子訳『源氏物語 巻三』
源氏物語 3 (3) (新潮文庫 え 2-18)源氏物語 3 (3) (新潮文庫 え 2-18)
(2008/09)
紫式部

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「一体、物語というものは、誰それの身の上と決めて、ありのままを語ることこそないけれども、よいことも悪いことも、この世に生きてゆく人の有様で、見ても見飽きず、聞いても聞き放しにしてしまえない事実を、またその中で後世にまで語り伝えたいと思う事柄を、心一つに秘めかねて、書き残しておいたのが始まりでしょう。作中の人物を、よいように言うためには、よいことばかり選び出して書きたて、また読む者の気を引くためには、悪いところでも誇張し、ありそうもないほどのことを集めて書くものですが、どちらにしても皆、この世にないことではないのです。異朝の物語にしても、その書きぶりはわが国と同じです。ただ、同じわが国の物語であっても、昔のは今のと違うことであろうし、書き方には深き浅きの差別はありましょう。といって、物語はまるで嘘だ、作り物だと言いきるのは、間違った見方です。仏のまことに尊い思召しでお説きになった御法にも方便ということがあって、悟りを得ていない者は、経文のうちにあちこち矛盾しているところがあるように疑いもするでしょう。方便の説は方等経の中に数多く見られますが、詮じつめれば菩提と煩悩の隔たりを説く一つの主旨に行き着くのです。つまり物語の中で、よいことも悪いこともまことらしくないほど大袈裟に書き換えながら、実は世の中の真実を語っているのもそれでしょう。よいほうにもってゆけば、すべて何でも無駄なものはなくなってしまうものです。」

円地文子訳『源氏物語 巻三』「蛍」より


『巻一』『巻二』に引き続いて、『巻三』読了。

 私が読んだ旧版版には「蛍」から「若菜 下」までの11帖が収められている。リンク先は再版のため収録範囲が異なる可能性があります。

 前巻から引き続き、養女とした夕顔の娘玉鬘を中心とした風雅な宮中模様が描かれる。夕霧、柏木など次の世代も登場しだすものの全体的に大きな事件もなく過ぎていく。
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円地文子訳『源氏物語 巻二』
源氏物語 2 (2) (新潮文庫 え 2-17)源氏物語 2 (2) (新潮文庫 え 2-17)
(2008/08)
紫式部

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 大堰では、女君はかえって近くに来られただけに物思いは増すばかりで、捨ててきた故郷の住居も恋しく、つれづれとなすこともないままに、あのお形見のことを取り出して掻き鳴らしていられる。どうにも悲しさの忍びがたい思いに、人の来ない所でうち解けて心のままに弾くと、折も折、松風が気恥ずかしいほどに音を合わせて響き渡った。
 尼君は悲しげにものに寄りかかっていられたが、起き直って、
  身をかへてひとり帰れる山里に
    聞きしに似たる松風ぞ吹く
 と詠まれる。御方も誘われて、
  ふる里に見し世の友を恋ひわびて
    さへづることを誰か分くらむ 

円地文子訳『源氏物語 巻二』「松風」より


 少し間が空いてしまったけれど、円地文子訳『源氏物語 巻一』に続いて『巻二』読了。

 アニメの「源氏物語千年紀 Genji」も見ています。男女の睦み合うシーンが割と多いのには驚きましたがなかなか楽しめています。映像はきれいだけれど、演出が独特で笑ってしまうんですが。

 この旧版版の円地訳源氏には「須磨」から「胡蝶」までが収録されています。「巻一」にも書きましたが、リンク先の復刊された版は6分冊のため収録範囲が異なる可能性があります。
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根岸裕『和英翻訳ハンドブック』
和英翻訳ハンドブック―新聞記事翻訳の現場から和英翻訳ハンドブック―新聞記事翻訳の現場から
(1999/09)
根岸 裕

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 誤用というよりも,むしろ,誤訳に近いケースもここでは取り上げた.「…以上」,「…以下」がその代表的な例で,日本語の意味を正確に理解していないために生じたミスである.英語そのものが間違っているわけではないので,コピーエディターに消されることはない.日本語の原文と英文翻訳とを照合している日本人が目を光らせなければならないところである.

根岸裕『和文英訳ハンドブック』


 図書館でおもしろそうなライティング関係の英語の本を見つけたので久々に読んでみた。

 本書は日経新聞の翻訳に携わっていた著者が社内向けに使っていたテキストを一般学習者向けに編集しなおしたもの。

 日本人翻訳者が書いた記事は、ネイティブのコピーエディターによるチェックを経て修正されるという。そこから日本語的な発想と英語的な発想からなる文を対照させていく。

 基本的には各項目ごとに、日本語の記事と修正前の翻訳と修正が行われた英文とがセットで並べられている。個々の文章は短いがかなりの分量が収録されている。
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高田敏子『詩の世界』
詩の世界 (ポプラ・ノンフィクションBOOKS)詩の世界 (ポプラ・ノンフィクションBOOKS)
(1996/04)
高田 敏子

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 そうしたさびしさのなかで、自分を支えるものは、結局自分の力であり、自分を元気にすごさせるものは、自分の心のもち方以外にないことに気づきます。
 人以外のものとも友だちになれる心をもつことは、さびしさや孤独感をなぐさめる大きな力になることはいうまでもありません。また、人以外のいろいろなものが、自分にとってどのような存在であるのか、いろいろに思ってみることで、はじめてそのものの価値に気づく、ということもあるでしょう。
 詩人リルケは「ものから学べ」といっていますが、わたくしたちのまわりにある一つ一つのものにも、それに問いかけ、話しかけてみることによって、さまざまなことを教わるでしょう。

高田敏子『詩の世界』


 茨木のり子さんの『詩のこころを読む』を読み終えた際に、いろいろと検索していて出会った本。

 著者についてはほとんど知らなかったけれど、最後の一章を使った著者の詩を読んでいると、生活に密着した素朴で読みやすい作風でいいなという印象。

 本書はそんな詩人である著者が中学生へ向けた詩の読み物。「おばあさんになったら、孫へ向けて詩から学んできたいろんな話をしたい」という著者の言葉どおり、やさしく懇切に語りかけた一冊。
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