深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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小林標『ラテン語の世界』
ラテン語の世界―ローマが残した無限の遺産 (中公新書)ラテン語の世界―ローマが残した無限の遺産 (中公新書)
(2006/02)
小林 標

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 ラテン語の一見複雑怪奇に見える変化形の背後には,実に整然たる,ほとんど整然たる,ほとんど数式の行列にも見まがうほどの論理性が存在することが見えてくるのである.各単語はさまざまに形を変えるのだが,その形のひとつひとつの現れを「形式」と呼ぶとすると,それらの「形式」には常にその形式特有の「意味」が付随しているのである.この論理性を理解して,最初のある「丸暗記」の時期を過ぎてしまえば,変化形の多彩さなどは要するに「意味」の明晰さを保証するものに変化してしまうことがわかってくる.

小林標『ラテン語の世界』


 私はラテン語のことはほとんど知らないのだけれど、文学作品をはじめ様々な機会で出会うので少し知りたくなって手にとってみた。

 本書はラテン語の特徴や歴史、変遷などについて書かれた本。ラテン語が読めるようになるわけではないが、ラテン語に関するさまざまな知識が得られる珍しい一冊。

 日本語のように助詞などを使って単語をつなぎ合わせる膠着語に対し、ラテン語は屈折語と言われ、単語そのものが変化し意味の違いを表す。

 この規則が極めて論理的にできているので、引用文にある最初の丸暗記の部分を通り過ぎれば、形から文章の意味を明晰に導き出すことができるという。
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斎藤兆史『英語達人塾』
英語達人塾 極めるための独習法指南英語達人塾 極めるための独習法指南
(2003/06/24)
斎藤 兆史

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『英語達人列伝』の続編ともいえる一冊。『英語達人列伝』は日本で英語の達人クラスに達した人間の評伝だったが、本書はそういった達人たちの学習法を参考に著者が英語の独習法を述べたもの。

「発音」から「音読」、辞書の使い方から語学教材の選び方まで、英語を独習する人にとっては有益な情報がまとめられている。

 ただし、ここで想定される英語到達レベルは達人クラスであるため、設定されている課題も一朝一夕にできるものではなく、何年もの継続的な学習が求められている。参考にすべき英文の丸暗記とかポケット型の辞書を読むとか。

 そのため入塾心得で述べられているように、自分が何のために英語を学ぶのかが明確でないとかなり厳しい。その点は非常に考えさせられた。
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今野緒雪『マリア様がみてる キラキラまわる』
マリア様がみてるキラキラまわる (コバルト文庫 こ 7-56)マリア様がみてるキラキラまわる (コバルト文庫 こ 7-56)
(2007/12/26)
今野 緒雪

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「マリア様がみてる」シリーズの最新刊が出たので読んでみました。

 出版されたばかりということで、ネタバレも含むので格納。
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上田勤、行方昭夫『英文の読み方、味わい方』
英語の読み方、味わい方 (新潮選書)英語の読み方、味わい方 (新潮選書)
(1990/04)
上田 勤、行方 昭夫 他

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 このところ立て続けに読んでいる行方氏の著作。こういった本の場合同じ著者のものを続けて読んでいると、ある程度内容が重なってくる部分もあるので、新鮮な気持ちで復習ができ悪くないと思う。

 本書の第一部は行方氏が教えを受けたという上田勤教授の『現代英文の解釈と鑑賞』という書物から40の文章を選び編集を加えたもので構成されている。『英文の読み方』で触れていた先生の一人は上田先生だったんだなということがわかる。

 そして第二部ではヘンリー・ジェイムズの短編『五十男の日記』を最初から最後まで通して読み解いていく。

 英文を日本語のように味わいたい人に向けて書かれたということで、内容は高度で解説なども最小限にとどめられている。『英語のセンスを磨く』などを読んで、さらに解説付きで英文を読んでいきたい場合に最適だと思う。

「はじめに」ですすめられているように第二部の「五十男の日記」から読んでいった。ヘンリー・ジェイムズは『アスパンの恋文』があまり印象に残らずそれきり手つかずだったけれど、この短編はとてもおもしろく評価を改めさせられた。
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斎藤茂吉『万葉秀歌 上』
万葉秀歌〈上巻〉 (岩波新書)万葉秀歌〈上巻〉 (岩波新書)
(1968/11)
斎藤 茂吉

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  葦べ行く鴨の羽がひに霜降りて寒き夕べは大和し思ほゆ 〔巻一・六四〕

志貴皇子

  我が背子を大和へ遣ると小夜更けてあかとき露にわが立ち霑れし 〔巻二・一〇五〕

大伯皇女

  神風の伊勢の国にもあらましを何しか来けむ君も有らなくに 〔巻二・一六三〕

大来皇女


「古事記」を読んだときに上代歌謡が難しかったので、「万葉集」はこの選集から入ることにした。

 本書は歌人である著者が万葉集の中から短歌に絞り、その10分の1ほどに当たる約400首を選んだもの。上巻には、全二十巻のうち第一巻から第七巻の中から選ばれている。

 それぞれの歌には1ページほどの評釈がついていて、歌だけでは意味の取りにくいものやそこに込められた詠み手の感情なども解説されていて勉強になる。
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米本昌平ら『優生学と人間社会』
優生学と人間社会―生命科学の世紀はどこへ向かうのか (講談社現代新書)優生学と人間社会―生命科学の世紀はどこへ向かうのか (講談社現代新書)
(2000/07)
米本 昌平ぬで島 次郎

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 ヒトラー出現以降の世界に住むわれわれは、人間の価値や反社会的行動の原因を生物学の次元へ還元してしまうことの危険をよく知っており、事実そのような警句は繰り返し発せられてきた。ここでもう一度整理しておくと、その危険とは、IQの遺伝子や、犯罪傾向の遺伝因子や、反社会的あるいは暴力的な遺伝子という、生物学のレベルとは対応関係のない、その意味でありもしない遺伝子を想定したり、人間の社会的行動を説明付けしようとする生物学概念へ人間解釈を還元してしまったりすることである。それは、人間解釈の浅薄さ以外の何ものでもなく、このような言説に対しては感度を鋭くして、ていねいに批判しつづけていかなくてはならない。

米本昌平ら『優生学と人間社会』


 優生学の歴史を振り返りながら生命倫理の問題に取り組んだ本書。優生学と聞くとすでに過去の遺物といったイメージがあったけれど、そうではないことがわかる。

 考えてみれば「よい子を産みたい」というのはどの親も願うことだろうし、どの国家も「優秀な国民が多いほうがいい」という思惑を持っているだろう。

 現代は羊水検査や受精卵診断などが可能になり、急速に進展する分子生物学が様々な生命操作の可能性を突きつけている。

 こういった問題を前に、広く行き渡っている「優生学=ナチス=悪」という図式が、生命操作をタブー化し、議論することさえままならない状況を許していて本当によいのだろうか。こういった問題意識から著者らは優生学の歴史を振り返ることを試みている。
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岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』
ヨーロッパ思想入門 (岩波ジュニア新書)ヨーロッパ思想入門 (岩波ジュニア新書)
(2003/07/19)
岩田 靖夫

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 愛とは、一人の絶対者が一人の絶対者へと呼びかけることである。類的な同一性の中へ相手を同化することではない。それゆえ、罪とは、他者のこの呼びかけの拒否以外のものではない。他者との対話を拒否すること、他者を避けること、あるいは逆に、他者を奴隷化すること、言いかえれば、自己を絶対化すること、それが根源の罪であるだろう。同化ではなく、呼びかけである。神が人間を呼んだように、人間も人間を呼び、それを通して神を呼ぶのである。それが、「神の似姿」であることの意味である。

岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』


 本書はヨーロッパの思想についてコンパクトにまとめられた入門書。著者は「はじめに」でヨーロッパの思想の礎石がギリシアの思想とヘブライの信仰にあるとまとめている。

 このはっきりとした主張をもとに、本書は3つの章から構成されている。ギリシアの思想とヘブライの思想がそれぞれまとめられ、最後の章で以後のヨーロッパの思想を概観している。

 ギリシアの思想の本質である人間の自由と平等の自覚からデモクラシーが生まれ、世界を支配する法則や秩序を見出そうとする理性主義から哲学や科学、数学が生まれた。

 そして創造主である唯一神を崇拝するヘブライの信仰は魔術的なものを駆逐し自然科学が生まれる土壌となった。

 また「神の似姿」としての人間という考え方は、他者を必要とする「愛」を生み、それは人間が「自由」であることを必要とした。そしてキリストに象徴される優しさが倫理面で大きな影響を与えた。
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斎藤兆史『英語達人列伝』
英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 (中公新書)英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 (中公新書)
(2000/05)
斎藤 兆史

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 日本を文化大国とするために、英語が重要な役割を果たすことは間違いない。当然、質の高い英語教育が必要になるだろう。だが、それはけっして日本独自の言語文化を犠牲にするものであってはならない。最近、英語という言語の成り立ち、その多様性、あるいは英米の言語政策(さらには戦略)などをまったく視野に収めぬ浅薄な英語教育推進論が横行していることを、僕は何よりも憂慮している。

斎藤兆史『英語達人列伝』


『英語の発想がよくわかる表現50』で今後読み進んでいくとよい文献として紹介されていたので読んでみた。

 本書は明治から昭和にその驚くべき英語能力を駆使して活躍した日本の偉人たち10人を取り上げ、彼らの英語学習に関するエピソードなどを集めたもの。

 ここに描かれるエピソードは、新渡戸稲造から白州次郎までの10人が、その英語の力を使って外国人と対等に渡り合ってきたということを示したものばかり。学習環境は貧弱だったと思うから、本当に驚くべき人たちがいたものだと素直に思う。

 いきなりカーライルと新渡戸稲造の英文を並べられて、読者は彼らの英語能力をまざまざと見せつけられる。このように著者は、達人たちの興味深いエピソードをいくつも並べていく。著者の語り口は軽快で、とても楽しい読み物だった。
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行方昭夫『英語のセンスを磨く』
英語のセンスを磨く―実践英語への誘い英語のセンスを磨く―実践英語への誘い
(2003/01)
行方 昭夫

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『英文の読み方』以来、ここ最近立て続けに読んでいる氏の著作。本の煽りに「英字新聞やペーパーバックを読み始めてみたけどわかったようなわからないような」層を対象とし、英文読解を解説したもの。

 大体1ページ分くらいの英文29題が収録されている。第1部では英文と訳を照らし合わせて読みながら注意すべき点を詳しく解説し、第2部では新聞から小説まで様々な題材を実際に読者に訳すことを求める形になっている。

『英文の読み方』は解説が主体だったのに対して、本書はまとまった英文が第一にくる。その点でかなり実践的な面が強く、『英文の読み方』の次に読んだほうがいいかもしれない。

 正に英文訳読の授業を受けているような感じがする。丁寧な解説と訳がついているので、ある程度英文の数をこなしたい人におすすめ。
[行方昭夫『英語のセンスを磨く』]の続きを読む
ヴァルター・ベンヤミン『ボードレール 他五篇』
ボードレール 他五篇 (岩波文庫―ベンヤミンの仕事)ボードレール 他五篇 (岩波文庫―ベンヤミンの仕事)
(1994/03)
野村 修、ヴァルター ベンヤミン 他

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 芸術作品は、それが存在する場所に、一回限り存在するものなのだけれども、いま、ここに在るという特性が、複製には欠けているのだ。しかも芸術作品は、この一回限りの存在によってこそその歴史をもつのであって、そしてそれが存続するあいだ、歴史の支配を受けつづける。作品が時間の経過のなかでその物質的構造にこうむる変化にしても、また、場合によって起こりうる所有関係の交替にしても、その歴史の一部分である。

ヴァルター・ベンヤミン「複製技術の時代における芸術作品」


 岩波文庫版の本書には、「複製技術時代の芸術」が収められていて、色々なところで言及されているので、それ目当てで手にとってみた。

 その他に本書は、「フランツ・カフカ」「カフカについての手紙」「ボードレールにおける第二帝政期のパリ」「ブレヒトの詩への注釈」「歴史の概念について」の5篇が収められている。

 ヴァルター・ベンヤミンはドイツ生れの文筆家。ユダヤ系の人だったようで、ナチスの手から逃れる最中に服毒自殺を遂げたという。

 ここに収められている論考のほとんども反ファシズムの決然とした態度に貫かれていて、著者の人柄と生涯をしのばせ、心を打つものがあります。
[ヴァルター・ベンヤミン『ボードレール 他五篇』]の続きを読む
ピーター・アトキンス『ガリレオの指』
ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
(2004/12)
ピーター アトキンス

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 われわれの周囲の世界では、花びらが開く、木が伸びる、考えが形成されるといった複雑な事象が起きて、乱雑さが減っているように見えるが、そうした事象は何かの作用がないと起きない。その作用が、どこかほかの場世に、より大きな乱雑さを生み出している。正味の効果は、何かを作り出す事象で乱雑さが減少して生じるエントロピーの変化と、何かを動かしてエネルギーを散逸させる事象で乱雑さが増して生じるエントロピーの総和であり、その結果はエントロピーの増大となる。全体として乱雑さが増すわけだ。このように、秩序が発生する現象では、見かけのカーテンをめくれば、どこかにより大きな乱雑さが発生してるのがわかる。われわれは、いや、すべての構造物は、カオスすなわち乱雑さが局所的に減少した存在にすぎないのである。

ピーター・アトキンス『ガリレオの指』


 時々、SFなどを読むこともあるので、そういうものがもっと楽しめるようになればいいなと思って手にとってみた。

 本書は、数十ページで現代科学の10の分野を概説していく驚異的なポピュラー・サイエンス。具体的にいうと、進化、DNA、エネルギー、エントロピー、原子、対象性、量子、宇宙論、時空、算術の10の分野。

 なぜこのタイトルかというと、フィレンツェの科学史博物館にガリレオの指の剥製が残っているらしく、実証性と普遍性を要件とする科学研究の幕開けを象徴するものとして、またその肉体は滅びても科学的な方法により得られた知識は肉体を越えるという意味を込めて採用されているという、科学礼賛の書。
[ピーター・アトキンス『ガリレオの指』]の続きを読む
フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』
ペドロ・パラモ (岩波文庫)ペドロ・パラモ (岩波文庫)
(1992/10)
フアン ルルフォ

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 どうしてあの視線は、諦めに対して挑みかかろうとするのだろう。自分のひと言やふた言、いや百言を費やしてでも、もし魂が救われるというのなら、いともたやすいことではないか。どうして許してやらないのだ。天国や地獄について、自分は何を知っていると言うのか。しかし、この辺鄙な田舎町に埋もれている自分にも、どんな人間が天国に受け入れられたのかはちゃんとわかっていた。そういう人たちの名簿があった。そして、カトリックの聖徒の名前を、その日の守護聖者から列挙しはじめた。「殉教者にして処女なる聖女ヌニロア、アネルシオ司教、寡婦なる聖女サロメ、処女アロディアまたはエロディア、それにヌリーナ、処女コルドゥラとドナート」さらに数えあげていった。うつらうつらしだしたところで、はっと起きあがった。「なんてことだ、山羊を数えるみたいに聖人たちを数えてしまったぞ」
 外に出て、空を仰いだ。流れ星が降っていた。静かな空を見たかったのでがっかりした。雄鶏が鳴いた。地上を包みこむ夜の帳を感じた。この地上、そう、「この涙の谷」だ。

フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』


 作者は20世紀メキシコの人。生涯にこの「ペドロ・パラモ」と「燃える平原」という短編集の2作品しかなかったらしい。本作は1955年に発表されたもので、ガルシア=マルケスの「百年の孤独」と並び称されるラテン文学の傑作といわれる。

 内容は母親の遺言をもとにフアン・プレシアドという男がその父ペドロ・パラモを探しにコマラという町にやってくるというもの。彼の母親はペドロ・パラモに出世の道具として利用され、ペドロが呼び戻すことを期待しながら叔母の許へ去ったのだ。

 ところがコマラの町はすでに滅びていて登場する人物たちはペドロ・パラモやその息子ミゲル・パラモの死などを語っては消えていく。そしてフアン・プレシアドも死んでしまい、大地主として成り上がり何人もの女性と関係を持ったペドロ・パラモの魁偉な人物像に焦点が移っていく。そんな彼も最後には、メキシコ革命や最愛の人スサナの死といった出来事に直面し、息子アプンディオによって殺され没落していく。
[フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』]の続きを読む
行方昭夫『英語の発想がよくわかる表現50』
英語の発想がよくわかる表現50 (岩波ジュニア新書)英語の発想がよくわかる表現50 (岩波ジュニア新書)
(2005/04)
行方 昭夫

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 まず大きな心構えとして,英語と日本語とはいろいろな面でずいぶん違う言語なのだから,おおよその意味内容が訳せればよい,と気軽に考えればよいのです.一字一句を正確に訳す,などと意気込む必要はないし,それはベテランにも無理なのです.そう,楽な気持ちでいてください.
 (中略)
 さて,それで「和英辞典」に頼らず,あるいは頼るに先立って,「和文和訳」をするのが大切になります.もとの文を他の日本語で言い換えるのです.小さい弟や妹にわかりやすく説明するつもりになればいいでしょう.その場合,頭をよく働かせることが必要です.

行方昭夫『英語の発想がよくわかる表現50』


『英文の読み方』がおもしろかったので、他の著作も読んでみようということで本書。引用は英作文のコツに触れた部分から。大学を受験する人には参考になると思います。

 この本は英語でつまずきやすい部分を解説する50のトピックとともに、著者が大学1年のときに出会った英作文の名著『和文英訳の修行』のように、そのまま覚えて使えるような生きた英語を収録することを目指している。

 water は場面によっては水ではなくて湯の意味で使われるとか“You are irritating”は「いらいらしている」ではなく「いらいらさせる」といった単語レベルから始まる。

 それが最後にはポオやホーソーンの一節を読むレベルまで行ってしまうから驚き。初学者からかなりレベルが高い人でも役に立つアドバイスが含まれていると思う。
[行方昭夫『英語の発想がよくわかる表現50』]の続きを読む
茨木のり子『詩のこころを読む』
詩のこころを読む (岩波ジュニア新書)詩のこころを読む (岩波ジュニア新書)
(1979/01)
茨木 のり子

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 詩は感情の領分に属していて、感情の奥底から発したものでなければ他人の心に達することはできません。どんなに上手にソツなく作られていても「死んでいる詩」というのがあって、無残な屍をさらすのは、感情の耕しかたがたりず、生きた花を咲かせられなかったためでしょう。

茨木のり子『詩のこころを読む』P.78)


 アリストテレスの「詩学」を読んだときに、fc2のAmazonマイショップを「詩学」で検索すると、この本が上がってきたので興味を持ち読んでみた。

 内容は詩人である著者が心に残っている詩を集めて解説したもの。それぞれの詩は生から死までの人生のそれぞれの局面をテーマに並べている。

 タイトルから想像していた内容とは少し違ったけれど、収録されている詩はどれも読みやすく、素直にいいなと思えるようなものばかりです。
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大井恭子『「英語モード」でライティング』
「英語モード」でライティング―ネイティブ式発想で英語を書く (講談社パワー・イングリッシュ)「英語モード」でライティング―ネイティブ式発想で英語を書く (講談社パワー・イングリッシュ)
(2002/02)
大井 恭子

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 たとえば、同質性の高い日本と対極をなすさまざまな異質の文化を抱えたアメリカには、次のような格言がります。

Tell them what you are going to tell them. Tell them. And tell them what you have told them.
(これからあなたが話そうとすることが何であるか述べなさい。そしてその話をしなさいそして話し終えたことが何であったかを言いなさい。)

 ここには、日本の「腹芸」「以心伝心」とは対極にある考え方が見て取れます。あくまでも言葉を尽くして伝えようとしなくてはいけないのです。

大井恭子『「英語モード」でライティング』


 英文ライティングの入門書。「英語モード」とは、英語を母語とする人たちが文章を書くときの発想方法が日本人とは違うことを意識しながら文章を書こうというものである。

 思っていたライティングの本とは違い、ある文を日本語に置き換えていくことを解説したものではなかった。前半部では、日本語と同じように考えていては間違いやすい部分を解説している。

 例えば“I”や“I think”、同じ単語がが繰り返される文章は稚拙だし、あいまいな表現は避けたほうがいい。日本語は状態を表現することが多い一方、英語では行為を表現する。英語では受動態はあまり使わないなど。
[大井恭子『「英語モード」でライティング』]の続きを読む
倉野憲司(校注)『古事記』
古事記 (岩波文庫)古事記 (岩波文庫)
(1963/01)
倉野 憲司

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 一か月ほど前に、「古事記ってエロいんだぜ」みたいな2ch系のまとめ記事を読んでいて、楽しそうだったのもあり、日本の神話も知らないとまずいだろうというのもあり読んでみた。

 岩波文庫版はページ下段に簡潔な注があるだけで、古典の苦手な私が読めるかなと不安だったけれども、価格も手頃で短いので何とかなるかなと手にとってみた。結果的には思ったよりも読めるという印象。

 古事記は上巻、中巻、下巻に分かれていてそれぞれ神代の日本の誕生から推古天皇までの歴代天皇が誰と結婚し何人の子をつくったかということを中心に数々の伝説や事績が書かれている。
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河野稠果『人口学への招待』
人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)
(2007/08)
河野 稠果

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 以上から得られる含意あるいは教訓の一つは、現在の日本人口はすでに相当なマイナスの人口モメンタムを内蔵しているのであるから、将来の人口減少がほとんど決定的であると捉えざるを得ないことであろう。これはいわば人口の〝借金〟であり、〝累積赤字〟である。このような状況で、出生率がある程度回復しても人口が長期的に減少するのは必然である。一方ではもちろんわれわれは以上の〝人口借金〟を減らすために出生率を回復させる有効な政策を打ち出す必要が大いにあると同時に、他方すでに既成事実になった「人口減少社会」への対応と適応を現実的に設計しなければならないということである。

河野稠果『人口学への招待 』


 日本はすでに人口が減少時代に突入したということで、少子化について知りたかったので本書を手にとってみた。

 人口学とは人口を変化させる要因についての学問であり、出生、死亡、移動などの基本的なものから、政治や社会、生物学的な要因までさまざまなものとの関連で語られている。

 本書はコンパクトながら基礎的な部分から書き起こした人口学への入門書で、合計特殊出生率や平均寿命など、よくニュースなどで耳にする言葉がどのように算出されているか解説されている。

 慣れない分野であるため、基礎的な部分の説明も若干難しく感じられたが、常識とは違う人口への話も多く興味深かった。例えば戦後の平均寿命が伸びたというのは老人の死亡率の減少よりもむしろ、乳幼児や死亡率や結核などによる若者の低下したことによる影響が多いのだという。

 また少子化の原因をさぐる経済学的なモデルは、子どもを持つことのリスクが増加したと考えるものなど様々あるなかで、避妊法や晩婚・子どもを持たないことを許容するような価値観・道徳が浸透したことにおく「伝播・拡散理論」が一部地域では現実によく適合するというのもおもしろかった。
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アリストテレース「詩学」 / ホラーティウス「詩論」
詩学 (岩波文庫)詩学 (岩波文庫)
(1997/01)
アリストテレースホラーティウス

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 悲劇とは、一定の大きさをそなえ完結した高貴な行為、の再現(ミーメーシス)であり、快い効果をあたえる言葉を使用し、しかも作品の部分部分によってそれぞれの媒体を別々に用い、叙述によってではなく、行為する人物たちによっておこなわれ、あわれみとおそれを通じて、そのような感情の浄化(カタルシス)を達成するものである。ここで快い効果をここで快い効果をあたえる言葉とは、リズムと音曲をもった言葉のことを、またそれぞれの媒体を別々に用いるというのは、作品のある部分は韻律のみによって、他の部分はこれに反し歌曲によって仕上げることを意味する。

アリストテレース「詩学」より


『驚異の魔術師』の解説でカルデロンは三一致の法則を無視したという記述があり、同時にこの「詩学」にも触れていたので興味を持ち手にとってみた。

 岩波文庫版はアリストテレースの「詩学」とホラーティウスの「詩論」が併せて収められている。一時期まではラテン語のほうが普及していたため、ホラーティウスの「詩論」をもとに「詩学」が理解されていたのだという。

 しかし「詩学」のほうは体系だって理論的に描かれているのに対し、「詩論」のほうは知人に宛てた書簡詩の形式で比喩なども多く取りとめなく書かれた感じがする。

「詩学」のほうは人物造型や効果的な筋はどういったものかといた事柄から、文体論や音素などの文の構成要素の分析、語の機能の分析や文体論といった言語学的なところまで多岐にわたり整然とコンパクトにまとめられていて、かなりおもしろい。後世に与えた影響を考えても、読書に興味がある人は読んで損はないと思います。
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行方昭夫『英文の読み方』
英文の読み方 (岩波新書)英文の読み方 (岩波新書)
(2007/05)
行方 昭夫

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 こうした出会いを経験して、「正確な日本語に訳せる」ことこそがもっとも重要だと私は考えるようになりました.ざっと読み流して大まかな意味を取り、曖昧な訳が出来たとしても、それで英文が「読める」とはとてもいえないのです.コンテクストを把握した上で、書き手の気持ちや言外に込められた意味など英文の裏の裏まで読み解き、それを生かした日本語に直せる力こそが、総合的な英語力の何より重要な基礎だと確信するようになったのです.

行方昭夫『英文の読み方』


「英文快読術」を読んだときよりは楽しめたので少しはレベルが上がってるといいな……。

 本書はモームやヘンリー・ジェイムズなどの翻訳で有名な著者が、英文読解についてポイントとなる部分を解説したもの。上の引用にもあるように、最終的には翻訳することを目標とするかなりハードな内容。「コツ」という部分もなるべく言語化することを心がけたと述べられていて、丁寧で誠実な印象を受ける。

 自分自身もペーパーバックなどを読んでいるが、「読めた」つもりになっているんだろうなと反省させられた。第一章が多読で平易な文が続いた後、第二章の精読で急に難しくなり、その後少し難易度が戻るような、心なしか優しいつくりになっているような気がする。

 著者は学生時代に教授が難解な英文をすっと訳していくのを目の当たりにして英文読解の大切さに気づいたそうだが、本書でも難解な文学作品が読みやすい日本語に変わっていくのを目の前にするのは、かなり刺激的で読んでいるだけで楽しい。
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